朝日杯FSの日

 桜木町にでも行こうかと思ったが雨もちらつく曇天に底冷えする天気ときては家にいるよりほかにない。前日競馬新聞を買っていたので一日中ちびちびアルコールを入れながらラジオで実況を聞きつつ競馬に興じたのもすべてPATと携帯電話のお陰であり、IT革命とはこのことかと一人つぶやきたくもなろう。
 一日中ちびちびアルコールと馬券を買った結果の利益は二千円で負けもせぬが勝ちでもない。G1だからという理由で朝日杯のテイエムヒットベなどに見合わぬ額を投下したのが誤りも儲けるためにやる競馬でもあるまいにG1なので多く賭けることに何の問題があろうか。こう見えても俺は腰を落ち着けてじっくりと検討、オッズに目がくらまなければ案外的中率は高いのだぜ。ところが場外にでも行くととにかくオッズオッズに目が行って腰を落ち着けるどころか腰を押しつける若者の性欲みたいな興奮具合でどうにも負けが込む。こうして一日中アルコールを点滴のようにぽちぽちと入れながらぽちぽちと携帯のボタンを押して競馬の興奮に浸るのが性に合っているのやもしれん。
 テイエムヒットベやはり田原坂を越えられなかったがそもそも坂に向くやつではない。平坦の千八あたりなら重賞の末席一つくらいさらえぬものだろうかとは思うも、ここは家賃も高すぎた。後藤の度胸一本の捲りに応えたマイネルレコルトは見事で先行力を見せたストーミーカフェも見事。タイムばかりが全てではないが戦前の大物欠乏感からすれば面目躍如と言えはしないだろうか。はたしてクラシックが見えたとはとてもじゃないが言えない気がするのも不思議なものですけれど。
 鳴尾記念サクラセンチュリーが内から他馬を斬って捨てた佐藤哲三が斬って見せた。あれは内が運良く開いたのではなく哲三が斬って開いたのだ暗殺者のような奴。俺は成績の割に評価の上がらぬセフティーエンペラスズカマンボの折り返ししか買っていなかった。ナリタセンチュリーサクラセンチュリー遅れてきた千年期もいずれどこかでぶつかるのかぶつかったときナリタの鞍上は誰なのか。田島も再び京都大賞典で見せた暗殺者の切れ味を見せてくれ。
 急に思い出したが、この日ダートで未勝利を勝ち抜けたカウンタックとはあけっぴろげな感じでいい名前だ。午前のレースで思い出したが柴田善臣が千五百勝だったか。俺は午前中達成と思いちょっと買って負けられて次のレースを見送ったら勝ちやがって俺は昔から柴田善は好きじゃないんだ、メモリアルの勝利など祝ってやるものか。
 そういえば香港の競走。ラジオ日本の番組を聞いていたらカップ発走前にアナウンサーが実況中放送が終わるようなことを言いまさかそんなはずはと思いながらラジオNIKKEIラジオたんぱではないのか)が聞ける携帯ラジオを取り出して異音声ステレオ実況中継アナウンサーによってここまで言葉の速さも数も違うのかと思っていたらラジオ日本は途中でブツギレで読売巨人の番組が始まる始末。やる気がないのならば最初からやらなければいいのに、今日の日本馬の惨状すべて貴様等のせいだとは言わないが。