http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/05/1666/
「大船のフラワーセンター」の正式名称は、「神奈川県立フラワーセンター大船植物園」というらしい。俺は小さい頃から「大船のフラワーセンター」と呼んでいた。俺が最後にフラワーセンターに行ったのは、二十年近く前のことだろう。父親が植物の写真を撮りに行くのについて行ったのだ。フラワーセンターへは車で行った。大船へのアクセスはモノレールが一番なのだが、フラワーセンターへは車で行った。なので、俺はフラワーセンターはもっと駅から遠いと思っていた。藤沢と接する奥の方にあるのだと思っていた。ところが、この日大船駅から歩いて行ったら、看板にあった通り十六分で着いた。十五分でも二十分でもなく十六分と看板には書いてあった。俺は二十年近く行かなかったフラワーセンターへ行った。
入場料は三百五十円だった。冬のフラワーセンターは寂しかった。来る人もまばらだった。枯葉が落ちるままになっていた。建物は老朽していた。トイレも清潔だったけどえらく古かった。「園内にはゴミ箱がありませんので、ゴミはお持ち帰り下さい」と看板があったのに、園内にはゴミ箱があった。今どき珍しく灰皿もあった。見るべき花は少なく、企画展のクリスマス飾りも寂しかった。
フラワーセンターの最大の売りは大温室だ。大きな温室があるのだ。江の島にあった温室より大きい温室だと思う。その温室も古くなっていた。中に生い茂る植物には風格が出ていた。年月による趣があった。そして、管理された温室とは思えない生い茂りっぷりだった。ハスのプールの中には金魚がいた。たくさんの金魚が泳いでいた。金魚もどんどん増えていったのだ、俺がフラワーセンターに来なかった間に増えたのだ。大きなバナナの木があった。あまりにも大きくて、大温室の大天井に届いていた。俺はある冬の夜に温室の天井を突き破るバナナの木を思い浮かべた。バナナの木はとても大きく、天井を突き破りそうなほど大きかったのだ。