驚異の地球

 私も今年で四捨五入すれば三十歳になり、もう四半世紀の人生を過ごしてきたことになります。そうなると、さすがに私のようなものでもいろいろな物、いろいろな話を見聞きしてきたことになり、子どもの頃のような、未知の世界に対する驚きですとか発見といったものも日々失われていくのを感じないわけにはいきません。そういった驚きの源となる好奇心も摩滅していく、そんな一抹の寂しさのようなものも感じながら、日から日へと、死に至るまでの暇つぶしをこなしているというあんばいです。
 ところが今朝、やはり世界は途方もない大きさのヴンダーカマーであり、人が何万年生きても踏破できぬテラ・インコグニタであると、あらために認識するような事物に巡り会えたのです。神様に「何をわかったような気になっているんだ」と、頭をぽかんとやられるような気持ちになったものです。人間がそこに生きる限り、新たな驚異や喜びが紡ぎ出されていく。そして、人類の喜劇も悲劇も積み重なって私たちは歩いていくのでしょう。
 ――立原あゆみ版「ブラックジャック」。秋田書店は中吊り広告一枚で朝から私を殺そうとした!