流れよ我が涙、とブルートレインは言った

http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-050228-0022.html

JR東京駅ホームには最後の姿を見送ろうと、約1000人の鉄道ファンらが殺到。あさかぜが午後7時、汽笛を鳴らしホームを後にすると、「あさかぜ、ありがとう」の声が掛かり、拍手がわいた。

 この間、走っている車両から、たまたま併走するブルートレインを見た。そして、その外裝があまりにもボロボロなのにひどく驚いたものだ。あまりにも印象に残ったので、てっきり日記に書いたかと思っていたが、すっかり書き忘れていたのでここに書く。あれは俺の生涯で最後に見たブルートレインだった。*1
 俺はついぞブルートレインに乗ったことがなかった。しかし、いつか乗ってみたい存在だった。俺がもっとも利用したJRの駅は大船駅だった。その大船駅で小さな頃からいくたびかブルートレインの姿を目にすることがあった。そして、行き先に書かれたはるか西の方の地名を見ては、かなたに延びるレール、数々の駅、見知らぬ町々に思いを馳せたものだ。そういう意味で言えば、登り列車はあまり面白くはないけれど、それでも真っ青な車体に胸ときめかせたものだ。そのブルートレインが無くってしまったのだ。
 テレビのニュースで別れを惜しむ乗客のインタビューを見た。「こちらの方がゆっくり旅を楽しめる」「早ければいいとうものではない」などと言う人が多い。しかし、改めて見るにブルートレインもかつてはその早さ、利便性において人気を博した存在であった。そして、新幹線や飛行機との競走に敗れ去ったのだ。汽車の登場が人々のパースペクティヴに大きな変化をもたらしたように、また汽車もブルートレインもその中にあって立場を変えていく。やがて、新幹線も飛行機も旅を楽しむためのもの、趣味性の存在になるだろう。もっとも、そうなった暁にはスタートレックのごとき瞬間移動の世界が到来していなければならない。まだ先の話なのだろう。
 ところで、ブルートレインが無くなっても、寝台車は残るという。高級な趣味性に特化した寝台列車は人気を博しているというのだ。本来のスピード競走に張り合えなくなった今、寝台車にとってそれが正しいあり方だろう。そこら辺への小旅行すらできぬ貧乏人の俺には、瞬間移動くらい縁遠い話ではあるが、どこかで寝台車が走っているというのは嬉しくない話ではない。

*1:関連記事などを読んでもいまいち要領を得なかったが、青い車体の寝台特急が姿を消す、というつもりでこの項を書いた