『義経』の感想

 まずはじめに言うと、昨日のは面白かった。今までで一番面白かった。大した盛り上がりもないので、自分でも不思議なのだけれど、なんだかわからんが面白かった。どこがよかったのか考えてみよう。
 やはり舞台の平泉というがいいのかもしれない。本編後の名所紹介も含めて、JR東日本のキャンペーンじゃないか、というような感じだけど、それがいいのかもしれない。日本のどこかであなたを待ってる人がいる、と言われれば、北の方へ旅立ちたくなるのが日本人だ。海を越えて北の半島まで連れて行かれると、日本中があなたを探すはめになるから要注意だ。それはここでは関係ない。まあとにかく、北の方には何か異民族が住み、国の都から遠く離れ独自の桃源郷を夢見る土地。なかなかロマンというものじゃないですか。
 あるいは、藤原秀衡が出てきたのがいいのかもしれない。奥州藤原氏三代というと、俺は一つの物語を思い出す。澁澤龍彦の「金色堂異聞」だ。これは『唐草物語』(ASIN:4309404731)に収められた一編で、一代目の藤原清衡が出てくるのである。それも、澁澤が平泉を訪れた際に出会った、タクシー運転手として。この妙な幻想とちょっとした悲しさを持つ作品、『唐草物語』の中では「空飛ぶ大納言」と並んで好きな一編だ。話を戻せば、妙な夢想家である秀衡と、それを演じる高橋英樹がよかったと思うのだ。ただ、何やらあの義経様への寵愛ぶりを見ていると、「義経さまったらオヤジキラー?」みたいな疑問も浮かんだのだけれど。
 しかし、忘れてはいけない役者がもう一人。その秀衡の子である藤原国衡を演じた長嶋一茂である。この一茂がよかったのかもしれない。その見事な体躯にヒゲを生やした仏頂面。これぞまさに武将の姿である。三国志の英雄の名を借りて言うならば、まさに奥州の胡車児、胡赤児、武安国である。あるいは刑道栄でもよろしい。惜しむらくは、台詞があったことである。
 そうそう、競馬ファンとして忘れちゃいけないのが馬の存在。白馬と言うにはちょっとベージュっぽい(粕毛?)ような気もしたけれど、オープニングで相変わらず絞れていない白いやつよりずっといい。この馬がよかったのかもしれない。しかもこの馬、東京ドームのマツケンサンバ大会で、松平健その人を乗せたというのだから、主人思いである(http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-050224-0006.html)。しかし、義経様は馬術をはじめ、武人としての修行をしているというけれど、森の中で天狗に教わった妖術があれば十分じゃないですか。馬より速く、走れ義経
 というわけで、なんだか面白かった義経。来週以降も要チェックと思った次第である。