肋間神経痛とやわらかな私

intercostal-neuralgia

 急に右か左の胸が痛くなる。息を吸うと激痛が走り、ろくに呼吸もままならない。「ひっ、ひっ、ふ」と出産みたいな呼吸でなんとかしのぐ。しばらくすると痛みは消える。かれこれ二十年近くそんな症状と付き合っている。しかしこれ、臓物に何か深刻な病気があるというわけではない。健康診断でレントゲンを撮ろうが問題はなく、医師に話してみても「肋間神経痛」の五文字で片づけられてしまうものなのだ。いや、文字数を問題にしたら「癌」はたったの一文字なのだけれど。
 で、さっきも左の方の肋骨あたりに痛みが到来。「ひっ、ひっ」(声に出してるわけではないです)と息を吸って耐える。すぐに終わるとわかっていても、耐えている間は本当に辛い。どうにかならないのか?
 というわけで検索してみたけれど、これといって対策は無いようだ。病院に行っても湿布と消炎鎮痛剤みたいなのを貰うくらいらしい。鍼灸や指圧の話なんかもよく出てくる。臓器や何かが異常をきたし、それを訴えるために神経が痛みを伝えるわけではなく、神経自体がなんか痛がってるんだから仕方ない、というところか。いや、中には重大な疾患の初期症状ということもあるらしく、必ずしも原因不明というわけではない。あるいは、気がつかないうちに骨折なんて話もあるから要注意だ(http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200411/2004113000114.htm)。ただ、自分の場合は単独の神経痛だろう。
 しかし、今までの肋間神経痛発作時を思い返すに、妙な一致が認められる。それは、何もしていないときに限って襲ってくるということだ。人前で発言しているときとか、何か運動や作業をしているときになった覚えがない。車の運転中に起きたら大変そうだけれど、そんなことは一度もなかった。なんか、ボーっとしているとき、楽な姿勢でいるときに発作が起こる。ここに何かヒントがあるかもしれない。
 しかして思い当たるのは、私の「楽な姿勢」についてである。私はかなり体が軟らかく、自分では楽な姿勢でだらけているのに、人から「何のヨガ?」と言われることもしばしばであった。ファミコンに夢中になっていた時分も、母からよく「そんな姿勢では背骨が曲がるわよ」と注意されたものである。そうだ、自分では「楽な姿勢」のつもりでいるのに、それが肋骨付近への負担となり、肋骨が露骨に不快感を示しているのではないのか?
 しかし、そう結論してみたところでどうなるものでもない。今さら楽な姿勢を矯正するなんて不可能だ。歳とともに体が固くなってくるという話もあるけれど、四半世紀過ぎて軟らかいのだ。すぐに老化とともに軟らかくなってしまうだろう。時おり訪れる不可抗力の激痛、神様が「しゃっきりせいよ」と活を入れてくれるのだとでも思おうか。私は人々の信じるどの神様も信じていないのだけれど、都合のいいときに神を創造するくらいは朝飯前だ。