ISOGO 1:00

 関内駅無人だった。改札口にめしいた人を呼び寄せる「ぽーん、ぽーん」の電子音も大きく響く。エレベータからはぎしぎしとベルトのきしむ音、からからとゴミが跳ねる音。僕がホームに降り立つと、人っ子ひとりいなかった。ここは僕の領土だ。と、思っていたら、北口の方に男が一人。この山河は僕の山、あの山河は彼の山。やがて終電に人びとが群がってきて、電車は磯子駅まで最後のお勤め。車内に香水よりも素敵な香りがしたものだから、何かと思って見回せば、ユリの花束持った男が一人。彼は花粉症のマスクをしていたから、その香りを楽しめたのかどうかは知らないけれど。その花束が何の花束なのかは知らないけれど。