NHKスペシャル『新シルクロード』の感想

 今回は「草原の民 風の道」。って、「今回は」といっても、今までの二回も見たり見なかったりだったのだけれど。ただ、今回は馬がわんさか出てきたし、全部しっかり見てしまった。
 そう、馬だ、馬。最初の方に出てきた、一度は絶滅してしまったという原生種。背がちっちゃくて、耳なんかピンと立っちゃって、なんだか童話に出てくるみたいな感じだったな。
 そんでもって、モンゴルの競い馬。なんだかああいうのを見るたびに、「モンゴルの子ども連れてきて騎手にしたらいいんじゃねえか?」と思ってしまう競馬ファンの性。しかし、現に日本の大相撲の横綱はモンゴル人だ。岩手競馬には中国黒龍江省出身の陶文峰騎手だっている。「競技としての近代競馬とは関係ないんじゃない?」と思わなくもないが、なんかその、ひょっとしたらスゲェ奴もいるんじゃないかって。何せ、馬に乗り、馬の肉を食い、馬の乳を飲み、馬の皮を身につけてきた民族だ。サラブレッドだって平気で乗りこなせてしまうかもしれないぜ。
 そういや、そんな民族の末裔が出てきた。カザフ族。長老が「この馬は最後の伴侶だ。私の家族にも誰にも乗せない。私が死んだら一緒に葬ってほしい」とか言ってたのが印象的。で、その長老が一族を率いて夏の放牧へ行く。そこで気がついたのだが、それに同行する子どもが被っていた帽子がNIKE。となると、長老の帽子はDESCENTEで、着ている服はPatagonia、遊牧地のテントにはColemanのロゴが……などというのは邪推が過ぎるか。まあ、どこぞのアラブのテロリストが、日本のJリーグのユニフォームを着ていた、なんて写真を見たことがあるし(コラかもしれない)、現代の大量生産衣服の広がり方は世界規模だろう。どうも日本人たる俺の発想はせせこましくていけない。
 しかしまあ、あのアホみたいな(馬鹿にしているわけではなく、語彙が貧しいだけです)大草原。あそこまで広いと「あの自然の中に行ってみたい」とかは一切思わない。いくら北海道産の俺でも、あの広さは想像するだけで恐ろしい。というか、想像がつかない。そして、そんなところに住む民じゃなければ、ユーラシア大陸制霸みたいなスケールは持てないんだろうな、多分。古代の西洋人が、「ケンタウロス」を想像したような、その人馬一体っぷりでさ。
 そういや、影絵劇が出てきて、古代ローマとの交流の場面をやってた。あの影絵劇って、なんというかその色彩の鮮やかさや動きを見るに、映画もテレビも無かった時代には相当な代物だったんじゃないかとか思ったな。で、ローマの歴史家が馬乳酒について残されたと考えられる記述が「異国風の酒」。おい古代ローマの歴史家、そりゃいい加減じゃねえか。「異国に行ったら異国風の建物があって異国風に豪華な異国風の王と異国風な酒を飲んだ」って、そりゃ当たり前だろ。……いや、酒以外の部分は詳しかったです。ちゃんと金の装飾も銀の動物像も出土もしました。ただ、なんで酒だけスルー?、と。どうでもいいけどね。
 えーと、草原の話か。天山山脈からの水の恵みもあり、家畜も良く育つ大草原。人間には理想の場所なんだろう。いや、番組で紹介されたのは過ごしやすい季節だけだったか。冬とかは厳しいんだよな。うーんと、だからなんつーか、彼らが大帝国を築きながら、その痕跡を残さなかった理由は、えーと、俺は司馬遼太郎じゃねえからわかんねぇや。