『ガープの世界』ジョン・アーヴィング/筒井正明訳

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 たぶん一週間くらい前に読んだ。何か長めの感想でも書こうかと思っていたけれど、機を逃したので簡潔に。この作品はアーヴィングの代表作ということになるのかな。ウィーンとセックスとレスリングと熊と寝取られ話と小説家の話が詰め込まれている。出てくる人々もありがちな人からありえない人までさまざま。それが渾然一体となってグイグイ引き込んでいく。次はどうなる?次はどうなる? 俺はアーヴィングの小説は面白すぎていけないと思う。小説が終わりにさしかかると寂しくなるのと同様、ある作家の小説の量にも限りがあるからだ。俺は敢えて読まないようにしているくらいだ。
 しかし、なんでこうも面白いんだか。「人生はおとぎ話」と『ホテル・ニューハンプシャー』。そして、あちらもこちらも「人生は昼メロ」って感じなんだな。あるいは『渡る世間は鬼ばかり』的だ。そう考えてみれば、普通に生きてるつもりの我々だって、幾分昼メロ的な「アーヴィングの世界」の住人のように思えてくるのかもしれない。父親が狂ってみたり、二十も年上の人妻と付き合ってみたり、隣にハゲオヤジのオカマが住んでいたり。もっともそこには、部屋の中にいるのが生きた熊か死んだ鹿の首かの違いはあって、そこらあたりが決定的に違うのだろう。そして、小説が終わるのは残りページでわかるのに、人生の方はそうもいかない。それが幸いなのかどうかはわからないけれど。