sans costume

 ナイター競馬には、仕事帰りに立ち寄るサラリーマンが多い。そして、ふと気付くのだ。私と同世代や、あるいは下の世代のサラリーマンが居ることに。帰りの電車でもそうだ。まだ新しい背広を着た若者。それが、先輩とはじめたばかりのゴルフについて話していたりする。ゴルフ。うーん、思わず私は唸ってしまう。そうか、世間一般ではそうなのだ。私より年下の人がゴルフか。私にとってはどこか別の世界、天の国の話のように思える。そうか、そういう人生もあったのだ。あるいは私にもあったのかもしれない。しかし、無理だろうな。彼らのようになるのは。背広を着て、通勤電車に乗って、飲みに行ったり、カラオケもするだろう。みんなでナイター競馬に行って、ゴルフの話をしながら帰る。いや、無理です。勘弁してください。そのお金だけは羨ましい。けれど、想像しただけで逃げたくなる。完全な社会不適応者だ。だから無職(のようなもの)をしているのだった。いや、無職にしか成りようがないのだ。なんかもう、ピアスの穴をもう二つくらい開けようか。それともおしゃれな刺青でも入れてしまおうか。