『凍鶴』上村一夫

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 絵師とも謳われる上村一夫の一冊。……とはいえ、上村一夫を知っていたわけでもなく、なんか劇画が読みたくなって手に取った一冊。上村についても、後から調べて知った。
 『凍鶴』は東北から米一俵の値段で買われてきた少女が、一流の芸者になっていく話。舞台はちょうど戦前戦中戦後であり、どこか『愛のコリーダ』(ASIN:B00012T22O)に見られるような雰囲気もある。『愛のコリーダ』といえば、俺はこれを本当の完全ノーカット、すなわち無修正版を見たことがある。大学の文化表象論みたいな講座だった。あんなものを若い男女に見せてどうするつもりだったのか。それより犯罪ではないのかと思った。
 『凍鶴』の話だった。なるほど、絵師と呼ばれるだけあって、ビタッと来る構図とかもあって、なかなかにしびれる一冊。ストーリーも花柳界のエグイ部分も描かれていて、思わず唸らされる。また、少女時代と一流芸者になった後のおつるの対比なども面白い。
 それはそうと、検索していて文庫版には未収録の回があることを知った(http://www.mandarake.co.jp/otherwork/bohyou/kamimura02/)。これについては読みたいな、と思うものの、乱暴される方の話については仕方ないかな、とも。わざわざ先輩芸者のニセ破瓜エピソードがあって、そこら辺を後でスルーするのではちと整合性が、とも思うので。
 うーん、しかしなんだ、ここら辺りの劇画なども興味深いな。もうちょっとあれこれ読んでみたくなる。しかし、底が深そうで、どうにも手を出す気にもなれないのだけれど。