流れよ我が涙、と伊原春樹は言った

http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200508/bt2005080308.html

◆チーム今季最長の5時間4分の試合を終えて巨人・仁志 「えっ、5時間もやっていたんだ。しんどいよ。グアムにいけるね」

 昨夜の広島―巨人戦、序盤に敵のエース上原から大量リードを奪ったものの、二転三転で延長戦へ。上のサンスポの記事の言葉を借りるならば「夏の泥沼をはい回るような消耗戦」だ。当然テレビ中継とはおさらばで、ラジオを聞く俺(CS?なにそれ?)。電波の入り具合からニッポン放送にダイヤルを合わせた。
 この日の解説は伊原春樹。おそらく日本野球史に名を残す三塁ベースコーチである。伊原の解説を長く聞くのはこれが初めてだったろうか、確かにその理論は的確。指摘したことがけっこう当たるのだ。ただ、である。「なんか監督には向かないかも」と思ったのも確かなのだ。すくなくとも、この解説の調子で監督は向かないかな、と。なんかこう、小馬鹿にしたような、というか、嫌味っぽいとか、そんな感じ。いや、言ってることはおおむね正しいそうなのだが、うまく選手に伝わるのかな、と。
 で、まず指摘されていたのが阿部慎之助石原慶幸。そう、ともに若き正捕手。これがもう、リードから間の取り方までいろいろとお小言を言われていた。他の両チームの選手についても、バントが下手くそだとか、三塁ランナーの離塁距離だとかなんとか。
 そうだ、その指摘がいちいち細かい。もう、ほとんど伊原が怒ってるといっていい状態になったのは、延長十回裏ワンナウト一塁三塁のサヨナラのチャンス。この時巨人は当然バックホーム体勢で、内野は前進守備。この時伊原は、一塁ランナーの緒方孝市が初球、二球目と盗塁しないことに怒ったのである。ほっといてもほとんど勝ちが転がり込んでくるケース(伊原自身も九割広島の勝ちと言った)だけれど、前進守備でベースカバーに入れない二塁はタダもらいなんだから、きっちり盜んでおけと。すなわち、ワンナウト一塁三塁から内野ゴロがホームでアウトになった次の段階で、走者が二塁にいるのと三塁にいるのでは大違いだというのだ。うーん、いやはや。しかもこのケース、ツースリーから緒方が走って、ボール判定なのに阿部が慌てて二塁送球→悪送球という事態になり、伊原さらに呆れるという具合。聞いてるこっちが恐縮してしまうわい。
 とはいえ、伊原が「基本ができていない」と再三言ったのは、きっと正しい。だから両チームとも低迷している。よく考えてみたら、伊原は広島出身であり、西武黄金時代の経験の他に、広島野球というベースもあるのだ。これを考えると、今のカープにもこういう理詰めが必要なのかな、と思う。とはいえ、監督向きではなく、コーチだな、コーチ。けど、阪神で上手くいかなかったんだっけ。どうなんだろ、そのへん。
 ついでに、この放送で一番の聞き所は延長十回裏のツーアウト満塁。このシーンでニッポン放送はやらかす。なんの前ぶれもなくコマーシャルに突入したのだ。「おい、倉だからってバカにするな!」と慌てて局を変え、倉凡退の後にニッポン放送に戻ってみると、まだコマーシャル。すると、いきなり低い男の声で「違う、まだ終わってない!」とおそらく内部連絡がはっきり聞こえ、その後女性アナのお詫びからマイクは球場へ。実況アナと伊原には伝わっていないようで、熱狂の場面の余韻を伝えている。このポカも伊原をすれば「基礎ができていない」とおしかりになられるであろう。
 まあ、何はともあれ、熱い試合であった。傍から見ればポカだらけの最下位争いかもしれないが、こういうのはこういうので楽しいもんだ。もちろん、カープが勝ったのだからなおさらだ。