この夏さいしょにゴキブリを殺した話

 朝、ユニットバスに入ると、なにか小さな影が動く。トイレの裏側を覗くと、一匹の小さなゴキブリが身を隠したふりをしている。ぼくは部屋に戻り、買ったまま箱の中にあるホウ酸だんごを持ってくる。そっとゴキブリの横に置く。
 その晩帰宅したぼくは、ユニットバスで小さなゴキブリの亡骸を見つける。ホウ酸だんごからゴキブリの足で数十歩のところで、仰向けになっている。ぼくは用を足しながらそいつを見て、まだ動いているような気がする。翌朝になっても動いているような気がして、なかなかそれを片づけられない。