横浜スカイウォーカー

http://www.skywalk.or.jp/
 横浜ベイブリッジのスカイウォークへ出向いた。結論から言えば、マリンタワーid:goldhead:20041002#p1)、マイカ本牧id:goldhead:20050514#p1)などと勝手に並べて、みなとみらいから取り残された感が漂う素敵スポットの一つとしたい。しかし、その一方で場末感や廃墟感で評価するのは間違いで、きちんとした観光場所として紹介すべきなのかもしれないとも思う。

 スカイウォークまでは、桜木町から路線バスで行った。バスの本数は非常に少ない。いや、みんな車で行きますよね。で、みなとみらいから中華街、元町を突っ切って高速道路に乗る路線バス。路線バスで高速に乗るのは初めてだ。で、ベイブリッジを突き進み、向こう端でくるくる回って到着。三十分くらいかかった。そして、しばらく歩くと目の前に出てきたのが光るタワー。とはいえ、単なるエレベータ塔であって、外が見られるのだ。外が見られるエレベータ発明した奴は死ね。

 入場料は五百円。スカイウォーク―要するに高速道路の脇にへばりついた歩道―に入る前に、さっそく一つ望遠鏡があった。これは特筆しておかねばならないが、この施設のあちらこちらにある望遠鏡はすべて無料なのだ。俺もカエラも見放題。いや、カエラは居なかった。カエラどころか、我々の他、あまりお客さんは居なかった。すなわち、望遠鏡占有可能。これはもう神様気分。これだけで五百円の価値がある。

 
 だーっと長いスカイウォーク。真横には二段目の道路を車が走る。右側の網にはところどころ大きめのすき間があって、そこにカメラをブッ差して写真が撮れる親切設計。左側にはところどころ椅子が並んだくぼみがあって、そこに隠れていやらしいことしようと思えばできると思うカップルにも親切設計。それにしても、やはり橋は橋であって、けっこう揺れる。しかし、高所恐怖症の俺にしてはあまり怖くない。あまりどころか、上りのエレベータの十分の一も怖くない。理由はよくわからない。


 港周りの堤防だとか、小さな燈台とかに釣り人たちの姿があった。どうやってそこへ辿り着いたのか、どうやってそこから帰るのか。きっと、彼らを送り迎えする船のサービスでもあるんだろう。しかし、こんなに船がバンバン通って、お世辞にもきれいとは言えない海で、果たしてどんな魚が釣れるのか。


 いよいよ、橋の真ん中当たりの施設、スカイラウンジへ。ラウンジといっても何があるかといえば、喫茶コーナーとお土産物屋。そして、いくつもの望遠鏡。はっきりいってこの望遠鏡覗いていたら、一日中お腹一杯ですよ。次から次へといろんな船が通り過ぎ、その船名や所属する港の表記に思いを馳せるもよし、特殊な船の仕組みに見入るもよし、赤ら顔のハゲ親父を乗せて疾走するレジャーボートを追うもよし。ああ、それに対岸で大型貨物船からコンテナを陸揚げする様子も面白かったな。巨大UFOクレーンに、衣装掛けみたいな特殊車両。あとは、ほら、波見てても飽きないから。
 そうだ、ここには外国の観光客もいたっけ。黒人や人種不明といった人たちを、日本人のガイドが連れていて、結局彼らが何語を喋っていたのか最後までわからなかった。あとは、地方から来たと見られる家族連れ、カメラマニアとおぼしき老人などなど、実にまったりしていた。それに、食べ物飲み物も観光地値段どころか、その逆を行くリーズナブルさ。軽食はすべてニチレイの冷凍食品と銘打ってあり、そちらは賞味しなかったが、ビールとおつまみなんてのもいいだろう。おみやげも飲食物も一人のおばちゃんが切り盛りしていたな。うーん、いやはや、ここは妙な楽園だ。

 しかし、腹も減ったので我々は我々を我々の楽園から追放した。帰りのバスの時刻表もラウンジにちゃんとあって親切。帰りのバスでは桜木町まで帰らず、中華街で降りようという計画。来たときとは別の、スカイウォーク目の前のバス停で乗車。もう一人、スーツを来た中年が乗ってきて、なぜかわからないが、我々の目の前に坐った。そしてバスは進む。……えらくのろのろと。そう、このバスは往路とは別のバス。大黒ふ頭内の各ブロックを、制限速度20km/hで回っていく。「C-1バース」だとか何とか判らぬバス停に停まり、幾人かの乗客を拾っていく。えらく化粧の濃いおねーさんに、口髭を生やした中年、そして、若い二人の中国人。そして、バスは高速に乗って、一路横浜駅西口に。えー! と驚いた。そう、これは横浜駅直通のバスだった。港湾で働く人を駅まで送るためのバスなのだろう。しかし、本数が少ないのだからしかたない。
 そして、トンネルのオレンジ色の光を浴びて何やら話す二人の若い中国人を見ながら、このまま香港映画が始まるんじゃないかと思う。横浜駅に着く。彼らは柵をひょいと乗り越えて、あっと言う間に街に溶け込んでしまい、誰とも見分けがつかなくなる。