『唐草物語』澁澤龍彦

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 空海絡みの本を読み、さらに漫画『陰陽師』などに触れ、さらに松岡正剛あたりの本に触れることによって、何か俺は俺の中で日本古典世界への取っかかりができたように感じた。無論、俺の国語力などたかが知れたもので、客観的には「バカがそんな思い違いをしている」というのが正しいところだ。
 で、そんな風に感じてまず思ったのは、「かつて読んだ本を読み返そう」というものだ。修学旅行で京都に行く。興味もない神社仏閣名勝史跡を巡らされる。ところが、後年になって興味が広がった後に思い返せば、なんともったいないことをしたか、と感じる。そんな感じ。金がないので京都にはいけないが、本は引っ張り出して読み返せる、そんな感じ。
 というわけで、澁澤龍彦の『唐草物語』引っ張り出してみた。半分くらいは日本のもの。俺は、やや古典ベースのものを流していたような重いがあって、とりあえずこれだ、という感じ。で、パラパラめくって思い出したが、別に古典興味なくとも、これはとても面白い本だった。いやはや。
 それでもやはり、いきなり安倍晴明のエピソードからはじまる「三つの髑髏」、蹴鞠狂いの貴族を描いた「空飛ぶ大納言」、この国のダンス・マカブルを描いた「六道の辻」……どれも、なお一層のこと楽しめる。いい、いいぞ龍彦。
 この中で一番の好みを上げるなら、やはり「空飛ぶ大納言」か。ロード・ダンセイニ魔法使いの弟子』の魔法使いの師匠がイノシシ狩りに「すべての賢者が見出した幸福への明白な道」を見出したように、この、蹴鞠への無心に見出される無重力の……、いや、この対比ではやや趣が違う。空飛ぶ大納言の浮遊への意志は、もっと軽やかで趣味的なものだ。そういう感じじゃないか。いや、他人にとってのそれがある人にとってのなにということもあるか。
 なんか、日記くらい頭の中で整理してから書けよと思った。