日本シリーズ前半戦

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2005/10/24/01.html

阪神はまだまだこんなものじゃないと思っている。これからも1球1球、集中して頑張りたい」。

 日本シリーズ一戦二戦が行われた。第一戦は濃霧コールドという前代未聞の結末だったが、二戦続けてのノックアウト劇。プレーオフを戦い抜いた千葉ロッテマリーンズの勢いを見た。いや、勢いばかりでなく、チャンピオンにふさわしい強さを見た。これでもし阪神にトンコロを食ったりしたら、ソフトバンクも浮かばれまい。後出しジャンケンみたいになるが、俺のシリーズの予想は四―二でロッテ。しかし、このままで行けば四タテか? という気にもなってくる。
 が、そうはいかないのが野球である。三つ勝って四つ負けた例だってある。その中でも特に有名なのが加藤哲郎の「巨人はロッテより弱い」発言だろう。いま、そのロッテが日本一に一番近いところにいるのだから皮肉なものである。
 と、ここで野球ファンなら常識ともいえるツッコミが入りそうだ。そんな発言は無かった、と。俺もそれは百も承知。しかし、それでもやはりこの流れで野球の歴史を当たれば、これを引っ張って来るしかない。寺山修司じゃないが「実際に起こらなかったことも歴史の内である」。多少文脈は違うかもしれないが、そう思う。「巨人はロッテより弱い」は、今後百年プロ野球の歴史に語り継がれる名言だ。それは、加藤哲郎でも、マスコミでもない、野球の歴史が作ってしまった一つの物語だ。むろん、実際には無かった、という蘊蓄とともに語り継がれていくのに、異論は全くない。
 というわけで、俺は上に引用した今江敏晃のヒーローインタビューにはいたく感心した。間違っても「阪神楽天より弱い」と言ってはいけない場面で、一番適切なことを言った(もしも言ったらシリーズの流れ以前に今江の命が危ない、という気もするが)。俺はこれも日本プロ野球の歴史を踏まえての言葉だと思いたいし、またこのシリーズがどうなって、どう語られていくのか楽しみでならないのだ。