TRICK 新作スペシャル

 トリックは結構好きなドラマである。『新選組!』や『タイガー&ドラゴン』のように「録画してでも見る!」というほどの入れ込みではないが、かなり好きの部類に入っている。仲間由紀恵も「ケイゾク」の中谷美紀ほどではない(単に中谷美紀が好きなだけだが)が、好感度が高い高いなのだ。
 さて、その仲間の妙な魅力のチャイナドレスにグッと来た冒頭。しかし、さらにグッと来たのが麿赤児であり、遊園地でも大人気の大好き大駱駝艦なのである。この無駄な畳みかけが素晴らしい。くだらないところに凝るあたりがいい。
 凝っていると言えば、冒頭のテレビ番組で、名取裕子演じる細木数子(語弊あるかな?)のバックに配されていたのは、密教金剛界曼荼羅胎蔵界曼荼羅に違いない。ここらあたり、密教があやしげなところに利用されやすい、という真理をついていて感服である(オウム真理教も今思えばかなり密教くささがある。「マントラを百万回唱えなさい」とオウム報道で聞いたとき、俺は「百万回て、さすがカルト」などと笑ったものだが、真言百万回は密教において実に普通の修行なのだ)。
 というわけで、なんだっけ。本田博太郎とか出てたな。新島同志の元ネタは……同志社か。早稲田や慶應のイメージはあんなところかな。あと、えーと、テリー伊藤とかね、なんというかやってくれるよね。
 ああ、けど、やっぱり一番やったのは名取裕子だよな。このドラマに出てくる大物はみんな楽しそうというか、はっちゃけてて偉い感じだ。ただ、最後にネタをバラされて開き直る部分あたりは、さすがにすごかったね、本物や、という感じ。
 あれ、そういえば、生瀬勝久(という名前を思い出すのに‘槍魔栗三助’で検索を掛けて本末顛倒な俺)の出番が少なかったな。アキバ系刑事も。何か中途半端な感じがした。というのも何か、編集でバッサリカットされた部分収録のDVDを買わせようという策に違いない。
 というわけで、あいかわらず小技効きまくりのトリック(あの弍瓶勉みたいな宇宙人とか、川谷拓三だの橋幸夫だの)であった。しかし、最後の一点、すなわちナトリが指し示した箱の中の感謝の声。ここが多少シリアスなスパイスとなっているところがさらにいい。野際陽子の男女産み分け商売の伏線がありながらも、それだけで終わらせないところ。マルクスが「宗教はアヘンだ」(この言葉については「宗教は麻薬、すなわち人間を狂わせる悪いものだ」という意味だと理解がされている。が、俺はマルクス主義者から「当時のアヘンは今で言うタバコみたいなもので、マルクスはタバコや酒のように身近な嗜好品だと言ったのだ」と聞いたことがある。しかし、アヘンの麻酔的意味に重きを置き「痛みを和らげる対処療法としての宗教」の事を言うのだという意見も目にしたことがある。すなわち共産主義の根本治療が必要だという意味だ。どちらが正しいのか、原典どころか原典解説の本にすら近寄ったことのない俺にはよくわからないし、そこまで手が回らない)や、「貧しい者、無知な者から信仰を取り上げてはならない」とルソーが(ルソーなのか?調べたが出てこなかったので、俺の大きな思い違いである可能性が極めて高い。たしか、理性主義の見地からこんなことを言った人が居た。……と思う。なんと()に括って引いた言葉二つとも内容が曖昧であってまるっきり意味がないのだ。驚くべき無駄!)述べたあたりを思わせるあたりだ。で、そんなものをそのまま残して、仲間はアパートを追い出され(なすびは久々に見たな。電車男のCMで見かけたかな?)、河川敷を歩く。阿部寛をトロトロとボロ車が追う。いい終わり方。が、残念なのは主題歌で、やはり鬼束ちひろの方がよかったかなと思わざるを得ないのであった。