受け入れろ

 俺は昨日、用事があって伊勢佐木町の銀行まで行った(俺は銀行が歯医者と同じくらい嫌いだ)。ついでに、銀行の裏手にあるタバコ屋(の自販機)に寄った。エクスタシー(ハーブ煙草)が切れたのだ。前に買ったのは中華街で、あまり見かけるものではないが、そこにならあるんじゃないかと思ったのだ。しかし、俺がそこに見つけたのはエクスタシー(ハーブ煙草)以上に驚くべきものだった。ジタン・ブロンド。
 ジタン・ブロンド(100s)といえば、俺がはじめに愛した煙草である。しかし、あえなく発売中止。俺はもとより本場のジタンが好きというわけではなかったので、ジタンとはそれきりであった。それが、日本語付きで何か売られていますよ。短さは普通のやつで、「ライト」の表記がある。ジタン・ブロンド・ライト。値段は三百円で、迷わず購入した。
 夜、部屋に帰って、期待に胸ふくらませて吸ってみた。が、どうだろう、「こんなんだっけ?」という思いが強い。「なつかしい」とか「ひさしぶり」という気がしなかった。今調べてみたが、ジタンのアメリカンブレンドなので、ジタン・ブロンドの系譜にあるはずなのだが。
 というより、俺はひさびさにニコチンを入れた。エクスタシー(ハーブ煙草)はニコチンフリーなので、これは本当のひさびさだ。エクスタシー(ハーブ煙草)を吸う限り、次の一本、次の一箱という意識はなかったのだが、これは別だ。とはいえ、煙草を買うには金がかかる。俺の理性の耐震構造の中で一番強いのは、金を使うことだ。俺がニコチンタール箱から遠ざかっているのも、金がないからだ。その点で、俺は凡百の禁煙家諸君とは違うと言い切ってしまおうではないか。貧しさゆえの傲慢、これを諒とせられよ。