シンザン記念など

 成人の日・祝日、小春日和というには寒いが、晴れた日の午前中、普段見慣れぬテレビなどうつらうつら眺めていると、なにやら風邪で学校を休んだ小学生の頃の心もちになり、鼻の奥がつーんとするような感傷におそわれたので、俺は桜木町場外馬券売場に行くことにした。
 俺は一つの単純な必勝法を携えて行った。それは「馬体重マイナスの馬は買い」という心底単純なものだった。しかし、金杯などそんな感じではなかったか。だいたい、寒い冬は太るものである。寒さに対して、衣食住において文明的対処ができる人間ですら太るのだ。北海道生まれがほとんどのアスリート的存在だとはいえ、馬が生き物的に太らないはずがない。だからこそ、逆に絞れてきた馬こそねらい目というわけだ。
 中山のメーン初富士ステークス。人気はシンボリエスケープだが、二桁増で出てきた。おまけに距離初体験ときては、買える要素がない。そこで目をつけたのが関西馬インセンティブガイ。輸送で絞ってくるケースは金杯と一緒。相手本線は中館のトーセンテンショウと一枠のマルターズホビーともにナイス体重。レースの方はシンボリエスケープが出遅れで、内心しめしめ。インセンティブガイは好位置につけて三角四角外を回っても絶好の手応え。「いける!」と思ったが、なんですかテンザンオペラって。前走のダート大敗に目をつぶっても、それ以前が苦戦続き。ああ、けど体重はマイナスだったか。しかし、その後のトーセン、シンボリ(一応押さえはした。大敗しないあたりこのクラスじゃ力上位か)、マルターズどれでもよかったのだから、柴田善臣余計なことを!
 西のメーンは重賞シンザン記念。こちらはイースターとロジックが人気していたが、俺には別の狙い目があって、それがマイナス体重で出てきたから歓迎。エムエスワールドステイゴールド産駒でマイラーとは思えないが、ロジックと同じくらいの脚は使えるはずで、人気がなさすぎて妙味。単勝馬連で勝負だが、三着も考慮に入れて三連複まで押さえたのだから結構勝負がかり。しかし、結果はむなしくゴウゴウキリシマが逃げ切り勝ち。この馬のことを「コンゴウキリシマ」だと思っていた人は少なからずいると思う(本職のラジオ・テレビのアナや解説も言い間違えているのを聞いた)が、いやはやまんまとやられてしまった。プラス二桁体重だったのにな。イースターとロジックに関しては、戦前から「クラシック級」という声と「たいしたことない」という意見があったが、この結果を見ると後者か。ここでエムエスワールドは距離伸びてから期待したいと言うのは、結果判断から矛盾するだろうか。まあいいや。
 中山最終は芝の二千二百。混戦模様のここでもマイナス体重探しで、本命はアドマイヤベガ産駒のブラックアルタイル。相手に隣の柴山鞍上のミシル産駒スプリングドリュー、長期休養明けでマイナスはどうかチョウサンを本線。しかしここは、タテ目も含めてけっこう買い散らかした。で、結果は一枠のトウカイの馬(+10だったが、これはベスト体重に近いと判断した)とチョウサンでタテ目を食らった。三着にスプリングドリューで、これが連に絡めば押さえで獲れたのだが……。
 というわけで、部屋で大人しくしておけばよかったボウズという結果になってしまった。しかし、マイナス体重探し作戦はそれなりにいけそうで、この季節限定で続けてみたいと思った次第。