ホッシャ!

 「そりゃ反則だろ!」と思わず言いたくなることがあって、それは例えばシーチャリオットの手綱を引く外国人厩務員がかっこよすぎることであったり、甲子園の瀬間仲ノルベルトであったりして、別に反則でも何でもないけれど、なんかすげえなという驚嘆だったりするわけで。その瀬間仲ノルベルトが二年で中日を解雇され、それを特集していたのが昨夜のTBSのドキュメンタリ番組「バース・デイ」だった。
 プロ野球には光と影があって、普段我々が目にするのは光の部分なのだけれど、当然そればかりがプロ野球の魅力ではなくて、やはり影に流れる血と涙もドラマなのだと思うのだ。その魅力が視聴率に結びついたのかどうか知らないが、TBSはzoneという番組でも戦力外通告された選手を追うし、さらには深夜でもそれをやっているというわけだ。そんな中からは、ソフトバンク宮地克彦みたいにブレイクする選手が出てくるわけだから、なかなか見逃せない番組なのだ。
 しかし、瀬間仲ノルベルト。甲子園であれだけ注目された(むろん、出自が珍しいせいもあったと思う)選手がドラフト下位指名ということからも、プロの目から見たらある程度はっきりとした何らかの欠点があったのかもしれないが、それでもやはり落差に驚く。いや、甲子園のヒーローがそのままプロでブレイクするとは限らない。そんなのはよくある話だ。
 それでも、これだけの体躯を誇る二十一歳の男が行き場を失うのは惜しい。が、やはり野球の世界は野球がうまくなければ話にならない。とはいえ、その点さらに野球を求めてプロ以外の世界が整備されてきているのは悪くない話だ。いつまでも夢を追い続けるのが本人にとっていいことかどうかなんてのは、他人が口出すことじゃない。俺はファンとしていろいろな経路をたどってきた選手が活躍すれば、それだけ野球は面白いと思うだけだ。
 整備といえば、合同トライアウトはすっかり定着した制度だ。この手の番組でも、目に見える大きなイベントだろう。あるいは、この手の番組が増えてきたのも、このトライアウトの存在が大きいのかもしれない。まさにその一球一打が人生をかけた大勝負になるのだ。……って、実際はそんなことないよね。もう、あらかじめ獲る獲らないくらいは決まっている。スコアラーは普段からそのくらいの仕事はしている。だいたい、一球一打で決まっていては、フォアボールやデッドボールで一打席終わってしまったりするのは公平じゃないものね。けど、それでも、そこに人生をかける悲哀。それはやはり影の魅力がある。
 しかし、決して儀式的なものだけでもないのも確かか。野村克也もバレンタインもヒルマンも遊びに来てたわけじゃない。そして思い出すのは伊与田の話(http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20051014#p4)だったりするのだけれど。ああ、そういえば今年カープを戦力外になった石橋尚至、阪神に拾ってもらったのだっけ。是非とも一歩死地に踏み込んだ男の起死回生に期待したい。それはもう、チームとか関係なく、心からそう思う。
 だから、昨夜の瀬間仲も片山文男(元ヤクルト)も野球に挑戦し続ける限りプロ野球への復帰を願う(もう一人は楽天の捕手で、結婚式直前に戦力外通告され、就職活動中とのこと。こちらももう頑張れとしか言いようがない)。