たとえばカワニナのこと

 軽く考えてみるとカワニナってだいたいホタルの幼虫のエサとしてしか語られないからすごいと思った。インパラがライオンのエサだとしても、インパラにはインパラのインパラらしさみたいなものがあると思う。だけどカワニナときたらホタルの幼虫のエサなのだ。ホタルは光るからすごいけれど、そんなに強まっている虫でもないし、ましてや幼虫なのだ。そんな幼虫のエサとしてばかり語られるカワニナってちょっと特別な存在なのだ。それでもって、たまには羽化したり、光ってみたりして驚かせてやろうとか思わないところが謙虚だ。いっそのこと、カワニナが大きくなるとホタルになる、くらいの嘘は許されるんじゃないかと思うけれど、そういう発想もないようだ。でも、もしかすると、カワニナにはカワニナなりの狙いみたいなものがあるかもしれないので、やはりホタルの幼虫のエサという方向から語るのが、カワニナに対する礼儀みたいなものかもしれないとも思うのであった。