駒音は高く澄め

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/shougi/news/20060413k0000m040103000c.html

 日本将棋連盟名人戦七番勝負が始まる直前の3月末、毎日新聞社に対し、「来年度以降の名人戦の契約を解消する」と通知してきました。

 俺はこの将棋を巡る重大なニュースを、自ニュFではじめて知った(http://news.2-3-0.org/comment/comment_200604_217.php)。そのくらい俺は将棋に疎くなっている。それどころか、名人戦すら追っていない。しかし、俺はかつてプロ将棋の世界が好きだったし、今でも好きなのはかわらない。なので、この件はとても興味深い。
 なんといっても名人戦を巡る話である。競馬で言えば日本ダービー。いくら賞金額が高いからといって、ダービーの格がジャパンカップに劣ることはない。竜王戦が建前上は上位だと言っても、名人位は別格なのだ。その唯一無二のタイトルであり、プロの将棋指しの階級の根本である順位戦も、総ては名人に向けての序列なのだ。その名人位を巡る戦い、読売マイラーズカップ朝日杯フューチュリティステークスを交換してくれ、というのとは規模が違う。
 将棋のタイトルにはスポンサーがついている。毎日が名人戦を持てば、読売は竜王戦。しかし、同じく大新聞たる朝日新聞のそれは朝日オープン選手権。七大タイトルをG1とすれば、文字通りオープン特別くらいの格しかないように思える(独自の発展を見せてはいたが)。NHK杯より下で、銀河戦JTのやつよりは上といったところか。朝日がそこで、七大タイトルの中でも別格の名人位奪還を狙うのも不思議ではない。
 しかし、不思議なのは将棋連盟のとった行動。毎日より朝日が高い金を出すと言ってきた。信義も大切だが、プロの世界は損得も大事だ。その点で別にそれに乗るのは悪くない。しかし、そこで毎日に「朝日がこれだけ出すって言ってきましたが」と話を持ちかけなかったのか。朝日が朝日オープン戦撤退を匂わせたのかもしれないが、毎日(系列)が王将戦を降りたらどうするんだ。というか、こういった交渉事がポロポロと外に漏れてくる体質は大丈夫なのか、と。いったい会長はだれだっけ、って米長邦雄なら仕方ないのか。
 とはいえ、新聞社が将棋に対して価値をおいてくれているという事実は、将棋界にとって喜ばしい話なのかもしれない。ネットや専門紙もある中、棋譜目当てで購買者の増減がそんなにあるとは思えない。むしろ、欲しいのは面子、体面。新聞社が文化のパトロンとして金を出すと言ってくれているのだから、悪い話じゃない。しかし、それもこれも今後の交渉次第ではどうなるかわからない。願はくは、将棋指しがその読みで新聞社を手玉に取るくらいであってほしい。なんなら、二社にそれぞれ真剣師を立てさせて、名人位スポンサー権争奪七番勝負くらいやらせるくらいで。