王貞治よりホームランを打つ選手、張本勲より安打を打つ選手、金田正一より勝つ選手、福本豊より盗塁する選手は出てくるかもしれない。しかし、新庄剛志だけは二度と現れないはずだ。考えてみなよ、一シーズンまるまる自分の引退興行にしてしまうプレイヤーなんて、新庄をおいて居るはずがない。君が同時代を生きる、たとえばイチローの記録はほうっておいてもずっと残るだろう。だけど、新庄を、SHINJOは君の記憶でしか語れない。しかし、語ろうにも言葉で新庄を語り尽くせるわけはない。だから、彼は宇宙人と呼ばれるのだ。それで、彼が何食わぬ顔してどこかのユニフォームを着てプレイして、やっぱり打率は二割五分くらいで、「やっぱりな」と思ってみたりするのも、この時代を生きるプロ野球ファンの特権なんだ。とにもかくにも、野球は面白いってことだよ。
