『アビエイター』監督/マーティン・スコセッシ

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 ジェイムズ・エルロイととハワード・ヒューズ。ヒューズのことをすこしばかり知ったのは、ジェイムズ・エルロイの小説からだ。最近(でもないか)読んだ中では、「おまえを失ってから」はヒューズを回顧するターナー・“バズ”・ミークスの話(id:goldhead:20050726#p3)。ともかく、そういうイメージ。
 で、『アビエイター』。正直、レオナルド・ディカプリオ?……という印象は公開当時からあった。しかし、ヒューズはボンボンで、後から思えばぴったりだったのかもしれない。極度の潔癖性、オブセッション。上の小説じゃ場末の店で馬肉をむさぼるヒューズが出てくる。調べてみると、晩年は確実にそうなっていたようだ。それを若いとき、さらに幼少にはじまりを求めたのは、この映画の発想だろう。
 飛行機とヒューズ。『アビエイター』は飛行士の意。この映画は飛行機が中心。空とスピードの中はクリーンだ。だから、エルロイ的なヒューズ面はちょっとだけ。ちょっとだけだけど、ちゃんと描かれている。個人的な契約、さらには部下に女を監視させ、盗聴器を仕掛ける猜疑心。あの、外の車の中にいたのがきっとミークスだな。で、飛行機。自分で設計アイディアを出し、自分で操縦桿を握る。ハーキュリーズの名は知っていたが、これも彼の飛行機だったとは。航空業界に殴り込み、自分でも冒険する大金持ち、今で言えばサー・リチャード・ブランソン? ピンと来ないが。
 長い映画。これは長かった。面白いか面白くないかでいえば面白い方に針は振れるが、最後は長さが気になったのはたしか。死ぬところまで描くわけにもいかないだろうが、どこで終わらせるのか、というような。
 掴みにくいところもあった。時間の経過がわかりにくい。どれだけ時が経ったのか。戦前・戦中・戦後。会社の苦境のシーンが多いが、そこもよくわからない。ディカプリオの顔、ひげを生やしたくらいではどれだけ歳をとったのだか。散漫な印象もあり、カタルシスもない。ハーキュリーズはつかの間しか飛ばなかったはずだ。
 文句で終わるとまるでつまらなかったみたいだな。まあ、いいじゃないか。