Throw it again,Marty!

http://www.chugoku-np.co.jp/Carp/Cw200605080025.html

リブジー打撃コーチに「私は退場になる。後は頼む」と耳打ち。清川栄治投手コーチに「次の投手は広池」とだけ告げ、一塁ベースへと向かった。

 マーティー・ブラウン監督は一塁ベースを引っこ抜いて、放り投げる。一億カープファンは「伝説のルーツ監督の再来だ!」涙を流す。マーティー、深々と頭を下げて退場する。このままマーティーは日本を去る。代理監督のもと、戦う集団になった広島は優勝する。
 ……という筋書きは残念ながら成り立たないんだな。いや、優勝しないのは残念だが、マーティーの野球を見られるのは大歓迎だ。何せ、ベースを引っこ抜いて投げるのも、すべては計算のうち。激情して及んだ行為じゃあなかったんだな、これが。おそらく、広池が肩を作る時間まで考えた策謀。ハートとブレインの見事なマッチングじゃないですか。長いプロ野球の歴史で、一塁ベースを放り投げて時間を稼いだのは、このときのブラウン監督だけである、とか言いたくなる。
 もちろん、「神聖なベースを……」とおっしゃる人もいるだろう。新庄剛志の襟の話じゃないが「青少年に悪影響が……」という批判もあるだろう。しかし、野球は真理探究の道でも、青少年教育のための道具でもない。エンターテインメントだ。ここのところ、カープの選手のその意識が希薄だった。どうも、真面目でおとなしいタイプが多かった。いや、ここのところではなく、オーナー好みのタイプなのではあるけれど。
 むろん、俺は貧乏と隣り合わせのストイックさと、泥臭い野球のカープが好きだ。しかし、しかしですよ、プレイの質とは別にどんどんアッピールはしてもいいと思うのだ。個性開放で注目を集める。これまた新庄ではないけれど、プロのプレイ+アピール、これ重要。そういうわけで、監督が一塁ベースを引っこ抜いて放り投げるチームだ、のびのびと好きにやれるんじゃないのか。たとえば最近の栗原健太。以前、珍しくスキャンダル記事に書かれていた(id:goldhead:20050426#p7)が、なんというか、存在感が増してきている。見た目が怖くなってきているのだ。スポーツ首輪より、金ネックレスの方が似合いそうな凄味。ちょっと前まで東京ドームの広さに驚いてたとは思えぬ変貌ぶりだが、彼が尊敬するという清原の方向に行ったってかまわんのだ。むろん、その分プレイの充実が求められるのは言うまでもない。
 そんなわけで、今後のカープの弾けっぷりを期待させるマーティーの好プレイだった、と俺は思うのだ。そして、この試合を落とさなかったことが大きい。活気が人気を呼び、人気が勝ちを助け、勝ちは活気を作る。こういうよいスパイラルにつながっていくことを願う。