中田英寿の三つの聖痕

goldhead2006-07-04

http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20060704-55238.html

W杯日本代表MF中田英寿(29)が、栄光と孤高のサッカー人生に終止符を打った。

 俺が最初にテレビのニュース速報。速報を打つほどか、と思った。が、現役引退については、やはり多少驚いた。なんだかんだいって、ジダンネドヴェドのように次のワールドカップに出るんじゃないのか、みたいに思っていたのだ。しかし、ここでさっと現役引退、幕を引いてしまった。
 サッカー門外漢の俺から見て、やはり今回のワールドカップでひときわ日本代表意識を感じさせてくれたのは中田だった。運動量や、当たり負けのしなさも中田が一番ではなかったか。他のメンバーから疎まれているとか、嫌われているという話もあるようだが、せめて中田のレベルまで達してからぶつかるべきじゃないのか、とすら思った。
 とはいえ、中田に好感を持てるかどうかといえば、全く別の話だ。現役最後のインタビュー、「話聞いてました?」。たしかにインタビュアーの技量は疑問で、当の質問内容は二度聞きに近いものだった。が、あの態度をテレビカメラの前で示す。見ている人に示す、そのあたり。ああいうのには、見ている者の心をぞわっと逆撫でするものがある。俺などはインタビュアーに感情移入してしまい、「そりゃあなたに比べれば私らは取るに足りないカスで、物わかりの悪い馬鹿かもしれないが、人前でハジをかかせなくたっていいじゃないですか」と言いたくなる。生きていく上で、中田のような人間とは近づきたくない。賢明な彼の言うことが正しく、そして筋が通っているがゆえに。
 おそらく、中田にしてみれば、nakata.netや何人かの親しい取材者を通じて自分の声は届いている、と思っているのだろう。しかし、世の中の皆が皆アクセスしているわけじゃあないし、ああいうやりとりを見て嫌悪感を抱いた人が、中田の生の声を聞こうとは思うまい。中田にしてみればマスメディアという信用ならない(彼がマスコミを信用しなくなる経緯についてはわかっているつもりだが)フィルタを通さず、自分の声が届けばいいと思っている。しかし、逆に生放送のカメラなどは生そのもの。ネットに接続しない子どもだって見ているだろうに。あるいは、マスコミの成長を促すために、ここでも嫌われ者を買ってでているのかもしれないが。まあ、いくら理屈があろうと、生理的に不愉快なのは変わらない。それに、生のコメントも、ちょっとかっこよすぎやしないか、みたいな。よくできた文章とは思えるが、心打つ名文ではないのもたしかだ。まあ、文筆が本業でないので、これは難癖。あるいは、本業っぽすぎるというもっとひどい難癖。
 さて、今後の中田はどうするのか。やはりビジネスだろうか。お笑いタレントは無理だろうが、なんでもできるだろう。……、いや、ラ王を思い出せ、空港でレイザーラモンHGと間違えられたファッションセンスを思い出せ(id:goldhead:20051110#p2)。むむむ、やはり中田は完全無欠超人であったか。
 しかし、日本代表は全員が中田クラスにならないかぎり、W杯でさらに先に進むのは無理だろう。門外漢の受けた印象では、全盛期の中田といえでも、欧州トップクラスの中ではワン・オブ・ゼムに過ぎない。その中田が、やはり追い抜かれる壁として、追い抜かれるまで日本代表やってほしかったな、とは、にわかの俺の最後に思うところである。「外れるのはヒデ、中田ヒデ」と、南アフリカ本大会の前に。