先週の土曜日、夕方だった。俺は下りの京浜東北線に乗ろうとしていた。その前に、桜木町駅で降りる人たちがホームに降りる。それが社会のルールだ。そして、その中に俺は宇野薫らしき男を見た。その男はおしゃれな帽子をかぶっていて、おしゃれなシャツを着ていて、おしゃれなパンツを履いていて、二の腕に存在感があって、それでも大柄ではなく、顔が宇野薫っぽかったのだ。入れ違いに車両に入りつつ俺は「あれ、宇野薫っぽいな。つーか、宇野薫だろうか。宇野薫なんだろうか」と思って、過ぎ行くホームに男の姿を探しつつ「宇野薫だったのかな、宇野薫っぽいよな。でも、車両内で‘宇野薫だったよな’みたいな会話してる人もいないな。でも、あれは宇野薫みたいだよな」とか思って、「同行者に‘今の宇野薫だったよね’って言ってみようか、けど、この同行者は宇野薫を知らない可能性が高くて、宇野薫が何者かと説明するはめになって、それを聞いた車内の人から‘今のが宇野薫なわけないじゃん’とか思われたら恥ずかしいからやめておこう。だけど、あれだけ宇野薫っぽいからには宇野薫なのかな、何度もテレビで見ているけど実物となると断定はできないな」とか思って、「そういえば宇野薫って元町あたりに自分の店持ってなかったっけ。だとしたらこのあたりが宇野薫の行動範囲だとしてもおかしくはないよな。やっぱり宇野薫だったのかな」などと思ったのである。
ちょっと調べてみた。なんと、宇野薫の店(http://www.uno-caol-showten.com/)は桜木町、それもこっちがわ(俺の中で野毛側がこっち、みなとみらいはあっち)にあるじゃないか。紅葉坂の方に、らんぷ亭の横の道から入って行ったりしたら行けそうなところにあるじゃないか。ああ、だとしたら宇野薫率はさらに高まって、高まって、俺は宇野薫を見たと言ってもいいように思えてくる。宇野薫のブログ(http://blog.honeyee.com/unocaol/)を見たって、特に否定するようなアリバイもないじゃないか。よし、あれは宇野薫だったことにしよう。
……俺がこうも宇野薫、宇野薫と浮き足立つのは、俺があまり有名人を見かけないたぐいの人間だからであって、もとより俺は宇野薫は好きな選手の一人だし(とはいってもHERO'S程度しか見ていないミーハーでっすよー)、こうなってくると次のブラック・マンバ戦も、それ以降もさらにものすごく応援したくなってくる次第なのである。そうだよ、あれは絶対宇野薫だった、オーラが違うよオーラが、俺には最初からわかっていたさ。