奈良高1放火殺人、犯人の父であり被害者遺族でもある男の手記についてのメモ

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060802k0000e040028000c.html

 事件を起こしたときも、捕まった後も、人生をほかしている様な感じです。

 この長男の目的が父親に対する復讐であるとしたら、焼き殺すよりも残酷な方法で成功をおさめたのではないだろうか。ほかに失ったもの、今現在の心情はともかくとして。そして、その親子の対面があったという。想像もつかないくらい凝縮された場だったのだろう。しかし俺は、この手記の最初の最初にひっかかって、転んでしまった。「ほかしている」て、何? 検索したらこちらの「大阪弁講座」が出てきた。
http://www.tourism.city.osaka.jp/ja/osaka_ben/0004.html

これは、友人から聞いた話だが、新入社員時代に東京から大阪本社に配属された初日、書類を整理していた上司から「○○くん、この古い書類、ほかしといて」と言われて、言葉の意味がまったく理解できず、愕然としたことがあるそうだ。大阪人にとっては笑える話だが、本人はいたって真剣。「これから大阪でちゃんと生きていけるのか、目の前が真っ暗になった」という。 なんでも“ほかす”という言葉の語感から、どこかにその物を置いておくとか、天日干しするとか、冷ますとか…その他もろもろのイメージが浮かぶのだそうだ。でも、正確には理解できない。ここは日本なのか…オレはどうなるんだ…、という果てしのないパニック状態へと突入していったらしい。

 おお、程度は大きく違うとはいえ、「もろもろのイメージ」浮かびましたとも。こんな事件で、「人生をほかしている」とは……、どんな意味があるのかと。しかし、意味は簡単、「ほかす」とは「捨てる」という意味という。活字ではあまり見かけない言葉だろうし、面食らってしまった。
 さて、もう転んでしまったので元の話題に踏み込めないし、考えてみたら踏み込むほどの勇気もない。ただ、あれだな、口頭でなく手記という形でも、この父親は「捨てる」でなく「ほかす」という言葉を選んだ。そこに、なんらかのニュアンスがあるのではなかろうか、とか。まあ、この話、このへんでほかしておこか。