コンテンツ育て

http://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/news/20060803i303.htm

試合中継の平均視聴率(関東地区)が42・4%だったことが3日、ビデオリサーチの調べで分かった。亀田興毅選手が判定勝ちを決める直前と直後の2回、瞬間最高視聴率(同)の52・9%を記録。

 今回の世界戦、視聴率だけ見ればTBS完全勝利。それは疑いない。しかし、あるいは今回限り。四万件の抗議。この抗議、今回の判定だけが背景にあるわけじゃない。亀田が亀田でなかったら、普通のボクサーだったら、おかしいと思う人が多くても、ここまですさまじい反響はおこらなかったはず。今までの、TBSの、マスコミのやり口に対する不満や批判が爆発した形。系列以外のマスコミは、露骨に冷ややかな態度をとるところも少なくない。スポンサーだっていい顔はしないだろう。下手すれば、ブームが収束してしまう可能性すらある。そうしたら、TBSはあっさりと亀田を切るだろう。なにもTBSに限らず、そういうものだろう。最大瞬間風速だけ狙って、食いついて、食い終わったら捨てる。
 俺はね、流行廃りってのは世の常だから、テレビなんてのはそれでいい部分もあると思う。世の中が十年一日の定番だけになったら退屈だから。けど、ちょっと勿体ないんじゃないの、と思うところもある。亀田ファンは亀田しか見ていないけれど、一応は亀田のボクシングが目に入るわけだ。それで喜んでいるわけだ。彼がけん玉チャンピオンとかルービック・キューブのチャンピオンだったら、ここまで人気にはならない。けっこう、殴り合いが好かれているわけだ。考えてみれば、大晦日に格闘技大会が乱立すらした格闘技好きの国。その中の一番の権威が復権したっておかしくないはずだ。
 だから、TBSは、そうだな、亀田ブームは亀田ブームでもいいけれど、別のところでボクシング全般の種をまくくらいのことをしておいても損はないんじゃないかとか思うのだ。たしかに他の世界戦で視聴率取れないかもしれない。しかし、もっと情報が多かったり、亀田との絡みでもでっち上げればいいじゃない。亀田の方はすぐにいなくなっても(三男までいなくなるまでにはけっこう時間かかりそうだけれど)、ボクシングの方は続くわけだし。まあ、亀田のためにボクシングにクソ塗りたくるTBSに、そんな発想はないか。あるのは略奪農法。一時的に収穫できればいいというだけ。しかし、もったいなくないか。
 俺がこんな風にボクシングファンでもないのに思ってしまうのは、プロ野球のことがあるからだ。視聴率が悪くなったからと、各局地上波で野球の首を切り始めた。長いこと、肥料をやり、育て続けてきた土地を、あっという間に捨てようとしている。もったいなくないか。確かに土地はやせ細ったかもしれない。しかし、まだまだ広大な土地だ。それを荒れるに任せてプロ野球中継というパッケージを魅力的なものにしようという努力もなく、捨てようとしている。まさか、ONブームの遺産だけでこんなに何十年も続いてきたわけじゃないよね? で、適当なバラエティばかりになったら、つまらない。
 ‘テレビ局は目先のことしか考えていない’なんていうのは、あまりにもありきたりでつまらない意見。だけど、まあ、なんかそんな風に思えてしまったのだ。太く短くか細く長くかの間あたり、できないもんなのかね。