ガッツだけはガチやで

 まだまだ世間の話題をさらいっぱなしの「亀田」問題。今朝のワイドショーでも検証などしていて侃々諤々。とはいえ、テレビ朝日に出てきたガッツ石松はよかったですね。ついつい本性を現していたというか、完全にテレビ向きのキャラは忘れ去って、真摯で紳士な元世界王者そのものでしたよ。そりゃ、「バッシング」を「パッシング」と間違えていたり、「汚名挽回」言ったりはしていましたけれどね、そんなのは些細なことです。胸を打つ言葉だったと思います。
 一方で「亀田」擁護に回っていたのは橋下弁護士。「プロスポーツなのでショーマンシップは大切」、「アマチュアスポーツとは違うのだからプロになった時点でこういうことがあるのはわかっている話」、「ランダエタも母国でやるより日本でやるから金になるからこっちでやった」、「心・技・体などと言っているからプロ野球は衰退した」……といったような主張(正確な聞き取りではないです)。すなわち、プロスポーツは見せ物興行なのだから、これで構わないという姿勢。
 この主張、どうでしょう。一部は合っているが、大きく間違っている。確かに、プロスポーツにはファンサービスやエンターテインメント性は大切だ。日本プロ野球が忘れていたことかもしれない。だからといって、今回の件は、「亀田」のリング外のパフォーマンスに五万件の抗議の声があがったわけではない。リングの中のことについて疑問の声があがっている。野球にたとえてみれば、「人気チームの投手だからストライク」、「人気チームの攻撃中だからセーフ」、「人気チームの打球だからフェア」みたいなもの。それではそもそもの土台のスポーツが成り立たない(あれ、でも、野球でそんなシーン、我々たくさん見せられてきたような……)。試合の外でファンにサインする、試合前にわくわくさせるような演出をする、言動やファッションで目立ってみせる、そういうのならありです。でも、それらをスポーツの勝ち負けに持ち込んだら本末転倒。少なくとも、公正なジャッジメントは建前として維持されなければいけない。それを斜めからさもわかったもののことように言うのには、少々失望しました。とはいえ、リングで命がけで戦ったガッツの目の前で言ったのは勇気ありますが。
 そうだ、ガッツの話だった。ガッツは今、ボクシング界に身を置いていないといいます。だからこそ、本音で語れると。これもまた異常事態。内輪に居る人たちは、いかにも歯切れが悪い。「亀田」のもたらす直接的、間接的な金になびいていると見られても仕方ない。それでボクシングの門を叩く人が増えると思いますか。ボクシングに夢を持てると思いますか。なにやら青少年の主張みたいになってきましたが、ボクシングファン以外にも名前と顔を知られた偉大なチャンピオンたちには、ガッツ石松のように凛とした姿勢であってもらいたい。門外漢にそんな願いを押しつけられたら、ボクシングは迷惑でしょうか?

追記:ボクシングファンは迷惑だろうな。たとえば、今回の判定についてだって「アフリカではよくあること」じゃないが、「ボクシングにはありがちなこと。なんでそんなに騷ぐの?」と思ってる人だっているだろう。そうだな、たとえばプロレス。小川直也と故・橋本真也の試合。亀田ブームほどじゃないが、テレビのゴールデンで視聴率20%以上を記録していたからけっこうな注目。多くの人が見ていた。そこで、プロレスの世界、価値観を読めない人間が熱狂したのは、おそらくプロレスらしからぬことをした小川の強さ。その小川に、プロレスはプロレスとしての強さを見せることもなく、プロレス独特の文法の中でうやむやにしていった印象(乱入で試合終わったり、なんかタッグ戦になってみたり)。それで、小川に見られた暴力性、より説得力のあるダメージに魅せられた人は、プロレスという他人の場に勝手に見切りをつけて、総合格闘技K-1に去っていった。光が当たるべきでないところに光が当たってしまう悲劇。しかし、サンプル数一人、俺の話なので勝手な推測。