http://www.sanspo.com/sokuho/0906sokuho003.html
ワイドショウみていまかいまかと気もそぞろになるも出社の時刻迫りくれば、携帯のワンセグイヤホン管を準備しやうとしたそのときにニュース速報の音鳴つて、思はず携帯カメラを画面に向ける。外出てみれば雲も厚く雨の予感のなかなにもかはらぬ朝のあるなか、いつも見かけるびつこの牛乳配達人の老人の重い瓶の入つた袋両手に提げて歩くのを見れば、思はず「をのこが、お生まれになりましたよ」と声掛けたくなるも、彼は往年の革命闘士でその脚は爆弾闘争の末の負傷かもしれないなどというろくでもない妄想が頭をよぎれば、軽々しく口にするもはばかれるやうな気になつて、黙つて湿気の海の中を歩いて行く。そして、脇道の小さな魚屋が大きな大きな音でNHKを、外に向かつて流してゐたのを聞いた。