動物たちの王のこと

 今週のギャロップ誌に妙なカラー広告一ページあって、この時期に種馬の宣伝でデザインがいかにも特異な雰囲気、あるいは日本のデザインではないのかと思わせるようなもので、肝心の種はLeroidesanimaux、すなわちルロワデザニモーと思いきや、カタカナのキャプションは「ルワデザニモ」となっていて、すこし首をかしげた次第。
 私のつたないフラ語知識でこの英字文字列を解析すれば「Le loi des animaux」となり、「Le」は「る」、「loi」の「oi」は「ぉわ」(トワ・エ・モアToi et Moi思い出されよ)っぽく、次は「です・あにもー」にはならず、「animaux」が母音始まりのためにひとつながりとなって、母音に挟まれる「s」は濁るので「でざにもー」、最後のモーを伸ばすかどうかはともかく「ルワ」でははしょりすぎの感が否めない。
 しかし、考えてみればこの馬、ブラジル生まれでアメリカに渡って芝のチャンピオンになった馬。今もアメリカに繋養されており、いくら見かけがフランス語だからといって、フランス語読みせよという道理もなく、アメリカ人に読ませたらどうかと思い、機械のアメリカ人であるところのMacintoshのtext-to-speechに喋らせてみたところ「レロイドサニマックス」のように聞こえ、なんとも言えず、ダンチヒかダンジグか、オジジアンかオガイジャンかに正解はないのだ、お母ちゃん。
 ところで、この広告の出し主は繋養先のストーンウォール・スタリオン(http://www.stonewallstallions.com/)とあるが、連絡先に日本人の名前あって吉田直哉、名前からして吉田一族っぽく、いったいだれかと調べてみると、こちらさま(http://d.hatena.ne.jp/hokan/20060329/1143630638)の血統表によれば、そういうことのよう。
 それより先に吉田直哉氏の牧場であるウィンチェスター・ファームのサイト(http://www.winchesterfarm.com/jp/index.shtml)を先に訪れるべきだったか、ご経歴も詳しくあって、なによりケンタッキーの雰囲気にやられてしまうが、馬のご購入どころか飛行機代も出ない一競馬ファン、こういった縁のない競馬の裏側だったところをさくさくとのぞき見できるあたりはネット時代の恩恵であり、また、競走馬、騎手、調教師たちが世界に羽ばたき、またこのように生産者として羽ばたくこの時代に、日本の競馬ファンに生まれて幸運だったという気はする。