お箸の国の人だもの

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061026k0000m040160000c.html

 長崎県佐世保市の久田学園佐世保女子高校(久田順子校長)は、来春の入試で「箸(はし)の持ち方」を検査項目に取り入れることを決めた。生活習慣や、食べることに対する最低限のマナーが身についているかを見ることが狙い。

 お箸の話だからというわけではないが、噴飯ものの話である。この日本という美しい国に生まれ、先人たちが暮らしの中で育んできた食文化を受け継ぐ身でありながら、箸の持ち方すらなっていない人間が多いというのだ。それを幼稚園どころか高校の入試でチェックするというのだから、もはや世も末と言わざるを得ない。この背景には何があるのだろうか。いたずらに欧米文化を受け入れ、ハンバーガーやドーナツばかり食べるような食生活も問題だろう。きちんと母親がお米を炊き、家族で食卓を囲むという習慣がないから、親も我が子の箸の持ち方一つ注意できない。あるいは、その親の世代ですら、まともに箸を使えないのかもしれない。教育の見直しも大切だが、それ以前に大きな問題があるのではないか。皮肉なことに、このニュースはそれを教えてくれたのである。

 ……とありがちなことを書いてみた私の箸の持ち方が間違っていると判明したのは、この世に生まれ出でて四半世紀も過ぎたころであった。私はいまだに正しい箸の持ち方をしていない。

http://www.feetoh.co.jp/hasi/kouza/
 こちらのサイトの「よくある悪い持ち方の例」で言えば、右上の持ち方。正確には、親指の先が人差し指に接するような形になる。表の解説では「人差し指1本で押さえているので力が入らず安定しない」とあるが、人差し指と親指で挾み込むので、完全に安定している。そもそも、中指を箸と箸の間に挾み込むだなんて、可動性を阻害するばかりではないか。ためしに箸を最大限広げてみたり、逆に箸の先端同士をカチカチ触れ合わせてみようじゃないか。いかに私の持ち方の方が合理的であるか実感できるであろう。さらに言えば、精確さだって何ら引けを取るものではない。じっさい、私の箸の持ち方が誤っていると露顕した酒席でも、たまたま話題が箸の持ち方に及んだから判明したに過ぎない。その場で私の箸さばきの見事さに皆が(奇妙に)感心したのは言うまでもない。だいたい、それまでの長い間、家族の誰一人として私の箸の持ち方を指摘できる者はいなかった。幼いころから「この子は箸をちゃんと使っている」と思われてきた証左である。私はこの持ち方で皮をめくって小さなお豆をつまんだり離したり、つまんだり離したりして、汁を溢れさせることだってできるだろう!
 ……などと言ったところでバルバロイの遠吠えにすぎないのは明白である。かといって、今さら正しい箸の持ち方など習得できやしない。一度死んで、また日本人に生まれかわって一から身につけるしかあるまい。そのときは久田学園佐世保女子高校を目指すぞ!