……犬を助けるには絶壁のけわしい急斜面を降りていかなければならないが、人びとは先を争って犬を助けようとした。愛らしくけなげな絶壁の犬の姿を見ているうちに、人びとは日々の生活が荒れ果てており、夜見る夢も潤いのないものだと気づいた……心正しい人たちのなかから飼い主になるという人が選ばれた。すると、よし、それなら自分がその兄弟に、伯父伯母になってやろう、とみんなが言い出して、国中のものが絶壁の犬のおかげで親戚になった。……犬の思い出をいつまでも大切にするために、家の戸には明るい色のペンキを塗り、額に汗して岩を削って井戸を掘り、絶壁に花の種を撒くことにしよう……外洋を航行する豪華客船の船長は、十四ヶ国語を使って、ごらんなさい、皆さん、あのジャスミンの花の強くかおるあたり、あれが絶壁犬の国なのですよ、と船客に伝えることだろう……
- http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061122-00000065-mai-soci「<絶壁犬>レスキュー隊員が無事救出 徳島・加茂名」。
- だから、あの犬は助けられなくてはならなかったのだ。北に破綻する自治体があり、東に難病に苦しむ子がおり、南に炭酸ガスで殺処分される野良犬が百万匹いて、すぐ近くでレスキュー隊の助けを待つ火事場の人がいようとも。
- 上のはガブリエル・ガルシア=マルケスの「美しい水死人」(ASIN:4828857133 これを表題とする文庫があるが、これはラテンアメリカのアンソロジー。ほかになにか収録されたのを持っていたように思うが、忘れた)を適当に改竄。なんでこれが思い浮かんだのだろう?