あれが左利き用だとは知らなかった

 あれは中学のころだったか、山下公園前の産貿ホールで海外物品市をやっていた。そこで、怪しげなロシア人から財布を買った。一応革製の財布だが、安価だった。二つ折りの財布で、左側にコイン入れがついていた。俺はその財布を長く愛用した。
 やがてその財布がくたびれた。新しい財布を買おうとして気づいた。世の中の二つ折り財布は、コイン入れが右側についている、と。選択肢もなく、それからいくつかの財布を使ってきたが、いまだに違和感があってしかたがない。いつも財布売り場を通りかかると、左側にコイン入れがある財布はないものか探すくせがある。
 左側コイン入れは合理的だ。財布を左ポケットから取り出す。当然左手で持っている。そのままコイン入れを左手親指ではね上げて開く→右手でコインをまさぐる。ほら、合理的。どうして、世の中の人これわからない。右側にコインケースつけて喜ぶ。これだと、左側を掴んで右側を開く→右上部を右手で掴む→左手を右側下に添える→右手でポケットを開く→まさぐる。これおかしいね。手順長いね。とても不便ね。
 ……と、常々思っていたのだが、俺の望む財布は左利き用だったことがわかった。
http://homepage1.nifty.com/hidex/left/saifu.html
 うーむ、どうにも腑に落ちない。本当に右利きの人間は右側にコイン入れがついていた方が便利なのか? 逆に言えば、左利きの人間は世に溢れる右利き前提の財布が、むしろ使いやすいってことじゃないのか? そして、俺がオーダーメイド革財布に物欲が湧いてきた責任は、誰が取るんだ?

追記:今まで気にもかけなかったオンラインショッピングにおける財布。左利き用というわけでもないのに、左側コイン入れもいくつかあるな。買おう、と決断するまで行かないが。ただ、漫然と店頭で探すよりは、ネット通販が確実だろう。これは。