坂本博之引退試合

 十二時ごろには布団に潜り込んだのだが、風の音が強くてなかなか寝つけない。ようやく眠りに落ちかけたころ、くだらないメールで目が覚める。また風の音。しかたなく起きて、テレビをつけるとボクシング。ダイナミック・グローブ。そうか、こういう枠があるのか。そして、試合は“平成のKOキング坂本博之引退試合第5R。
 坂本といえば俺ですら知っている。もちろん、地上波ゴールデンタイム、対畑山隆則。どこかあか抜けた雰囲気のある畑山に対し、そうだ、その、なんとか園、孤児院育ちの坂本、ボクシングのスタイルも対照的だったような記憶があるっけな。なんか、こう、不器用なタイプだったんだ。あれは、ボクシング知らずにも伝わってくるもののある試合だったなあ。
 とか、思っていたら、バッティングによるカットで試合終了。7Rまでの判定でドロー。生涯初のドローだという。そして、引退インタビュー。……坂本がこんなに冗舌(?)な人とは知らなかった。なにかこう、吹っ切れているように見えた。
 もう一試合は日本タイトル戦。大之伸くま……て? 手足が長いように見える、というか、なんか妙な動きな感じ。それがゴリゴリで押していく。が、詰めたところでチャンピオン小堀祐介の反撃。これがずばずばっと入って、それでもくまさん退かない。すごいな。と、思っていたら、2R終了ゴングと同時くらいに右フックでダウン。これはダメージ。そして3R、深夜一人で思わず声が出た、そんな見事な顎をかすめるフック一閃。いやはや、思いがけずいいものを見た。