lost slugger goes to the field of dreams

http://www.nikkansports.com/baseball/f-bb-tp0-20070201-150233.html

ノリも「架空のキャンプ」イン

 中村紀洋のことをすっかりわすれていたよ。このチャーミングな見出しに目を引かれなければ、このまま永遠に失われるところだった。
 おそらくもう、中村ブランド中村紀洋の実力とは関係ないところの話。すなわち、球団に対する態度として、タブーの一線を踏み越えてしまったゆえの、浪人状態だろう。申し合わせたような構図、すこし面白くない。
 が、それとは関係ないところで、とても面白い。中村ノリは、世界野球史の中で、はじめてあちらがわの住人になってしまったのだ。
 架空のキャンプインの次には、架空のキャンプ打ち上げ。架空のオープン戦を経て、架空の開幕戦。強打者、中村紀洋の初打席だ。そして、架空の初ヒット、架空の初ホームラン。ときには架空のスランプもあるだろうけれど、架空のシーズン後半戦を迎え、架空の故障で架空の二軍落ちもする。やがて架空の契約更改で、架空の代理人を連れて、架空の交渉。いつしか、中村は誰にも見えないところで、誰にも見えないボール相手に、誰にも見えないバットを振る。誰にも見えないスコアブックに、彼の架空の本塁打が積み重なっていく。さようなら、失われた強打者。百年も先には、ひょっとしたら君を幻の世界本塁打王と呼ぶ人もいるだろう。