100万円の腕時計から人生ははじまる

 こないだ、コンビニで、ふと時計とかファッションとかの雑誌を立ち読みした。すると、驚いたことに、腕時計カタログの最下限が「100万円未満」だった。ほとんどお情けの100万円未満。あとは、200万、300万とあった。これが、物好きな時計マニア向け雑誌や、金のありそうなチョイ悪中高年向けならともかく、どう見てもカジュアル風味の若者向けなのだ。普通の若者が、コンビニでこれを買ったり、100万円以上の腕時計を買うのだ。
 そうか、普通に大学を出て、正社員コースに乗った人間は、100万円以上の時計をしているのか。これはうかつだった。そこまでとは思わなかった。彼らは最低でも100万円の腕時計をして、その先で趣味や恋愛、結婚、子作りを考えるのだ。20代中盤でそこまで行っているのだ。これはもう、想像が及ばない、世界が違う。格差という列にすら並んでいない。普通コースの人々から見たら、俺のような虫がなんで息をしているのか理解できないだろう。俺は俺がなんで息をしているのか理解していないが。