ナナオのカラーユニバーサルデザイン対応ワイドモニターが欲しい!

 「とにかく七尾を目指せばいいのよ」と母は言った。僕ら四人家族は能登半島で道に迷って途方にくれていた。ハンドルを握る父がいらいらしていたのがわかった。早く七尾につけばいいと思った。たしか、雨が降っていたと思う。色弱の人というのは、僕たちがふだん想像するよりも多い。たしか、女性に比べて男性に多かったかと思う。パブリック・サインでも先進的な役所は配慮しろというし、たとえばほら、地上波デジタル対応テレビのリモコンだ。クイズだかアンケート用だかの四色ボタンがあって、わざわざそのボタンに色の名前が文字で載っている。これには気づかなかったな。どっかの自治体で配布しているPDFで知ったんだ。朝市、そう、輪島の朝市のときに雨が降っていたかどうか。雨上がり、だったかもしれない。僕はまだ小学三年くらいだった。賑わいは苦手なので、隅の方を、家族を見失わないように歩いていた。ふと、ただ座っているだけのおばあさんに気づいた。いや、ただ座っているだけではない。ござの上に小さな小さなお土産品を置いて、売っているのだ。輪島塗、だったのかどうか。僕の記憶では赤べこ、別の地方のお土産物なのだけれど、それを並べて、ただ座っていたのだ。僕はなんとはなしに、いや、なんとなくかわいそう、に思ったのだ。それで「いくらですか?」と聞いてみたのだ。「五十円」と答えたのだ。僕は、お金は持っていた。ただ、そのときは五百円玉が一番細かい硬貨だった。「はたして、このおばあさんは四百五十円のお釣りを持っているのだろうか?」という疑問、いや、心配にとらわれた。おばあさんに面倒をかけてはいけない、恥をかかせてはいけない。そうとらわれて、何も言わず、きびすを返した。そういうわけで、ある意味本職である僕がカラーユニバーサルデザイン対応のワイドモニタをほしがるのは当然のことだと思う。毎日八百字ずつユニバーサルでワイドであることの讃美を書くと思う。あのとき、あの小さなスーヴェニールを僕は手に入れなかったからこそ、より手に入れたといったらおかしいだろうか?