- 作者: フィリップ・K・ディック,山形浩生
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1991/11
- メディア: 文庫
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読むのにちょっと時間がかかった。文体がしっくりこなかった。ヤク中たちののんべんだらりんとした会話が、この本の厚みを作っているのだけれども、それをはじめとした会話文が、なんか妙にカマっぽくて。いや、とりとめもないそういう会話のもっさり感が出ているとは思うけれども、それに乗れなかったのは俺のせいだろうな。でも、ダシール・ハメットの「うふん」とか、そういうレベルではないです。それに、半分も来たら、後はノンストップ。
内容の方は、なるほどディックお得意のSFガジェット、設定は極力控えめで、圧倒的にヤクの中にいる。現実は鞏固。それで、自分が自分を監視する搜査官という妙な状況、それら相まって、主人公が分かれていくのか、一つになっていくのか、その移行の描かれ方が実に巧み……というか、力があるというか、ともかくディックだなって。
あとは、えーと、そうだな、前半のフレックの妄想だったり、ドナが何にぶっ放したのかとか、ドナルド氏の名前とか、まあ、そのあたりはそのあたりで、それは一つのあれなんだろうか? しかしまあ、何より、やっぱりディックは大慈悲の人だよ、菩薩行の人だよ、願婆婆永沈苦海だよってね。それで、苦海から叫ぶのをやめねえ、ユーモアも捨てねえ、そこにしびれる。
ところで、映画化されたばっかりだよな、『スキャナー・ダークリー』。なんか、イラレのライブトレースみたいなやつで。
http://wwws.warnerbros.co.jp/ascannerdarkly/
へえ、キアヌ・リーブスが主人公か。ネオ。ドナはウィノナ・ライダーか。ああ、なんかわかるわ、いいわな。で、バリスは誰だ、バリスは? ロバート・ダウニー・Jr……ってわからんな。俺、読みながら、バリスは完全にジョン・グッドマンだった。なんだかわからんが、バリスだけはジョン・グッドマンでしかなかったんだ、『ビッグ・リボウスキ』のジョン・グッドマンだな。なんか、アニメみたいななんかなんだから、差し替えさしてくれんかね?