『ブレックファースト→オブ→チャンピオンズ』/主演:ブルース・ウィリス

ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ デラックス版 [DVD]

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 カート・ヴォネガット・ジュニアの名作『チャンピオンたちの朝食』の映画化作品で、しかも主演がブルース・ウィリスなんだけどさ、正直この作品の存在を知ったのは、この作品を借りる五秒前なわけ。それでさ、俺は『チャンピオンたちの朝食』からSF読書に入った(!)、ヴォネガットに入ったくらいのもんで、期待と不安半々っていうか、まあ別に原作は原作、映画は映画だから、そんなに意気込むわけもないんだけどね。
 それで、全編見てみて、なんというか、うーん、微妙というところだったなあ。コメディでさ、コメディ要素も盛りだくさんなんだけどさ、作り手のせいか、日米間の笑いのツボの差か、正直、コメディとして笑えるシーンは一つもなかった。もちろん原作もさ、ゲラゲラ笑えるタイプじゃなくてさ、そこんところはこの作者ならではの間であったりなんかだったりするんだけどさ、ともかく映画ではコメディ、スラップスティックやってるわけで、そこんところが、少なくとも俺にとって滑ってるってのは悲劇なわけ。
 ……って、なんかまるで、あの原作をドタバタお笑い映画にしましたって感じに書いてるな、俺。そういうことでは決してないわけで、そこらあたりはむしろ、手堅く、原作のテイストを何とか生かそうって、作り手の誠実さは感じたわけよ。ウィリスがインタビューで「ファンの多い原作だけに」みたいなこと言ってたけど、そのとおり、なんかいたるところにヴォネガットの例のイラストとか出てきたりさ、まあ、それはちょっとしたサービスだとしてもさ、妙なテイスト、悲しいテイスト、狂ったテイストを出そうってのは感じられるんだけどさ。なんかどうも、そのあたりの一体感が無くてさって。
 でも、個々の役者……ウィリス以外も、俺ですら見覚えのある役者たちの演技もよくてさ、あと、音楽もビタッと来てたしさ、あのアメリカっぽさ、虚飾の欺瞞のアメリカっぽさの映像もよかったしさ。でも、どっかしら作品として突き抜けるところはなかったよなってところで、どうにもちょっと惜しいところがあるんじゃねえかって思うわけ。でも、ヴォネガットの中じゃ、たぶん映像化なんてしにくいやつをやったって、心意気は買いたいなってところ。