『アルベマス』フィリップ・K・ディック

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「ああ」ぼくはいった。「調和していた。あんなに距離をへだてていても。強制はなく、同意があるだけだった」
 そして送信したり受信したりするステーションすべての整合を、ぼくたちはVALISと呼ぶのだ。ぼくはそう思った。巨大にして能動的な生ける情報システム。死ぬことのない、ぼくたちの友人。この世にもあの世にもいるぼくたちの友人。VALISの愛は帝国よりも大きいのだ。そして果てしがない。

 ひっきょうずるところ『ヴァリス』って、どっかのガイキチが書いた宇宙人の哲学書みたいなもんじゃん? だからさ、「なんかすげえじゃん!」ってのはあってもさ、やっぱりお前なんなんだよってのが残るわけ。なんだよってのがすらりとわかったら苦労も面白みもないかもしれないけどさ、なんかすげえ、でもわかんねえって、わかりたいけど、やっぱり足りねえって思うの。
 それでさ、なんか事情の方は翻訳者が巻末でながながと検証してるからいいんだけど、もともと『ヴァリスシステムA』として書かれて、ボツになってたのが『アルベマス』、原題は『Radio Free Albemuth』。たぶんさ、ここに描かれるVALISが、一番わかりやすいVALISじゃねえかって思うわけ。つまりはさ、『ヴァリス』とか『聖なる侵入』読む前にさ、とりあえずこれ押さえておいて損はねえじゃんって。うん。もう俺さ、限りなくぬるいディック好きだしさ、この『アルベマス』はありがてえってすごく思うわけ。読みてえなあ、『精神強奪者の地下都市』。
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http://en.wikipedia.org/wiki/Radio_Free_Albemuth
 ちょっと英語版のウィキペディアでも受信してみるか。そうか、フェリス・F・フレマントはFFFで、666 を暗示してるのか(追記:って、FFFのキーワード見たら、「藤子・F・不二雄 氏のこと」て。『魔界大冒険とかPKDテイスト?)。マッカーシーニクソンアマルガムと言われても、正直、それらのキャラがピンとこないところはあるんよね。教科書的な知識はあってもさ、もっと最近のさ、クリントン夫婦のアマルガムとか、ブッシュJr.とライスのアマルガムとか言われたら、ちょっと想像つくけどさ。クソったれ、つくはずねえ。あと、作中から雰囲気を察するくらいしかできねえのは、バークリー気っ風かもだ。
 おや、映画化の話があるじゃない。まあそうだな、映画考えたら、『アルベマス』の方が向いてるかもなあ。アラニス・モリセット
http://hamchu.exblog.jp/6381678/
 こちらに詳しい情報があったぞ。監督はジョン・アラン・サイモンって……『ゲッタウェイ』ってのが一件ひっかかるが、その人なのかな。それより、フィルは誰がやるん? シェー・ウィガム、Shea Whigham、シア・ウィグハムとか、シア・ウィガムとかいろいろな表記あるみたい。……、おー、なんかいいんじゃねえのかあ。
 しかし、よう映画化されるなあ、ディックは。俺だったら、たとえば、えーと、ねえ、ほら、もうたくさんあるもんね。今世紀くらいは十分戦えるじゃんって。