『おっぱいとお月さま』

おっぱいとお月さま [DVD]
 おっぱいといえば男のロマンであって、おっぱいがいっぱいなどと歌われてしまっては身も蓋もないくらいのおっぱいなので、とりとめもなく照れちゃう。開き直っちゃう。
 そういえば、俺、人間タワーの頂点役になったことあったぜ、小学生時代。この映画の主人公坊やと一緒だな。もちろん、そんなに高くない。高くないけど、組み体操高度版ということで、一段、二段、三段、四段と、人間を踏み台にして登っていったっけ。でも、俺、チビで軽量だったけど、高所恐怖症だったな。本番の運動会、頂点まで登ってパッと立って手を横に広げれば完成。けれど俺、緊張もあって、下もいつもより揺れてて、腰が引けてたね。へっぴり腰で手を横に広げて、なんとかこれで、ってくらいでお終いにしたね。ちょっとかっこ悪かったな。後から父に、「あそこは崩れ落ちてでも、一瞬でいいからポーズを決めた方が絵になった」などと言われたが、そりゃあ無理よ。
 開き直るの忘れてた。おっぱいの話だった。そうだ、男のおっぱい好きには、性の目覚め以前のそれもあって、それが今俺の中にあるのかどうかは性欲で頭一杯の俺には見定めがつかないが、たしかにそれはあったと言えると思う。無意識で母乳を吸ってたときと、性に目覚めたときのその間。もちろん、男たちのおっぱいに対する熱い思いの中には、「その間」や母乳吸い時代への憧憬、回帰願望が含まれているんですか、フロイト先生。
 坊や役の子は非常によかった。見た目も文句なしにかわいいし、なんというか演技うますぎだろうというか、ナレーションもそうだとしたら(何語でしゃべってんのかもいまいちわかんねえが)、そうとうにたいしたもの。DVDのキャスト解説によると、本当に人間タワーの登り手の子を採用したとか。その後もちろんオファー殺到したけど、医者になりたいって一切辞めちゃったんだってさ。もったいないような、それでいいような。ビョルン・アンドレセンかもだ?
 それで、主人公がフランスから来た旅のダンサーのおっぱいを求めてやまないのだけど、そこにまた二人のライバル、地元の若いサーファーに、年上の恋人。年上の恋人がおなら芸人というなんともおかしな設定に、インポテンツといういかにもな設定。となると、寝取られ物語になるわけであって、俺大興奮……のはずだけど、インポというのはいかんわ。感情移入できん。鬱勃起の一つでもしてくれって。変態嗜好も、いや、変態嗜好こそニッチなのよ。ニチニチ。
 まあ、それはともかく、目覚め前、真っ最中、枯れ始めの三段階男性が一人の女を求めるわけで、モテモテやね。モテモテ女性役、これがまた、なんとも色気あり母性あり変態ありでいいんじゃないかって。母、年上の人、若い妻、三役がっつり。おっぱいの形については好みにマッチしないけど、映画にはマッチしていた。しかし、なんだろう、女というのは、やはりその、満足というのは、生きた肉の棒でなくてはなりませんか? 逆の場合を考えてみよう、ブロウジョブ、ハンドジョブだけとか……むむむ。
 というわけで、どういうわけかわかんないけど、子役はちゃんと子供なのに、がっつんがっつんファックシーンもあるし、スッと子供の妄想に入っていく感じとか、なんともいえない映画なんだけれども、カタロニアのかわいたような風景や、音楽、テーマ曲にエディット・ピアフ、これも素晴らしいと力説したい(さんざんおっぱい言っておいて説得力ないが!)。あと、ドグマチールと母乳と性感について語ろうと思ったが、人間性が疑われそうなのでやめようと思った。