迷信

 まだ、ガムというものを与えられてから間もないとき、母からよく言われたことがある。「ガムを飲み込むと、胃の中でひっついて、胃がちいさくなってしまう。そうなるとお前はものを食べられず、大きくなれない。ゆえに、ガムを飲み込んではならない」(大意)。
 この教えの気持ち悪さは、馬齢を重ねた今、かなりのガム食いになった今でも消えない。おそらくは誤飲によって喉に詰まらないようにするための戒め。しかし、未だにイメージとしては、胃を小さくするもの、なのだ(だったらダイエットのためにガム飲みまくればいい)。こんなに口の中に入れるものなのに、飲み込むことへの抵抗感はかなりのものだ。まだ、ダンボールの方が飲み込みやすいかもしれない。
 ……といっても、ガムを飲むことへの抵抗感、私の母の迷信などなくとも、多くの人が持っているものだろう。どんな奇天烈な変人や、破天荒な荒くれ者でも、ガムを飲み込む習慣のあるやつはいなかった。いや、奇天烈な変人や破天荒な荒くれ者とつきあいがあったわけではないけれども。

 というような思い出ぶらり旅のついでに、日本チューインガム協会のサイトなど見てしまうのが二十一世紀。そして俺は、チューインガム製造工程などを見ながら、サポティラの樹液を煮詰めて作っただけのガムベース、味もないだろうチクル噛みてえとか思ってしまったのであった。
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