『Symphony No1; Ode to Birds and Rainbow Op60』/吉松隆

Kamui-Chikap Symphony / Ode to Birds & Rainbird
 いつだったからTBSラジオの九時台くらいの番組で「日本酒にあうクラシック」とかいう特集をやっていて、日本の作曲者を紹介していた。武満徹伊福部昭、そして吉松隆の三人。武満徹の名前は知ってるし、ゴジラのテーマも知っている。しかし、吉松隆という名前は初めて知った。しかし、そこで流れてきた曲がなーんかよかった。そしてさらに、「現代音楽撲滅運動」をやっていたとかなんとか説明され、なんか面白そうと思った。そして買ってみたのだった。
 だいたい俺のような無学無教養の人間、「知性のみを追求したインテリ好みの無味乾燥な現代音楽思想、そしてその排他性は、豊穣の可能性を持つ音楽に対する虐殺行為だ! 今こそ叙情の復権を!」などと言われると、「そうだ、そうだ、学校の音楽室で聴かされた武満徹は退屈だった! おもしろい方がいい! 異議なーし!」となる。もちろん、クラシック音楽に対する知識・教養・素養いっさいなし! これ、「頭でっかちの現代芸術は、人間の魂を冷やすばかりで、芸術の天使はほほえまない! 今こそエネルギッシュで、原初的な描くことへの回帰を!」とか、「現代小説が袋小路で冷たく固くなっているのを見よ! 今必要なのは『ものがたり』の復活である!」とか、「現代仏教はマニアックな学究か葬式営業の二極化であって、人間一般の生活との間に大きな溝がある! 今こそ本来の仏の教えに立ち返るときである!」とか、「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ、独り静かで豊かで…」とか、まあ、そんなのにもひっかかりやすいわけで、こう、一向一揆に参加して、そのあとで「ルターに裏切られた!」とか言い出すタイプの人間だと思う。
 ずいぶん話が逸れたけれども、しかし、音楽の感想なんてどう書けばいいかわからん。ただ、携帯MP3プレーヤーに突っ込んで、10〜15分くらいの自転車通勤時に聴くのは「アウトー!」(ガキの使いの罰ゲームの天の声で)とは思う。やっぱり、そういうスパンで聴くもんではないわ。でも、たとえば、すげえ雪の降る日の深夜、黒く凍った道を行きつつ「この橋わたれるのか?」とか、「この坂は無理だ……」などと打ちひしがれているときのBGMとしては、「うおォン、これはぴったりだ」などと一人で盛り上がったことを告白しておく。