倉橋由美子短編小説集『パルタイ/紅葉狩り』

パルタイ・紅葉狩り 倉橋由美子短篇小説集 (講談社文芸文庫)
 四ヶ月も活字本を読まないでいると、一日に一冊本を読めるようになるのかもしれない。そういうわけで、適当に手に取ったといってはなんだけれども、半村良についで、倉橋由美子の短編集を読んだ。
 表題作「パルタイ」は「党」をとりまく革命運動を描いたデビュー作。無機的なようでいて有機的で、顔のない絵のような感じ。シュルレアリスムの、逆光の人影の、それでいてソヴェートの絵を思わせるような作品だと思った。
 「囚人」はギリシアの神話をベースにしたらしいが、学のない俺には解説を読むまでわからず。こちらも究極の無機的虚構の中で開けっぴろげになる内臓。太陽と内臓。『CUBE』って映画、あれを思い出した。グロ注意?
 「合成美女」は小粋なSF短編。レプリカント、シミュラクラ。頭の中で『RD 潜脳調査室』の絵を思い浮かべてもよろしい。鳴子ハナハルがエロ漫画にしてもいいと思う。
 おもむきかわって「夢のなかの街」。追憶と悪夢のふるさとをさまよう女。つげ義春のような。女の人の、父と母に対する感情、立場、そういったものの、男の自分にはどうにもわからないであろう、そのあたり。
 「霊魂」は、俺一番のお気に入り。こんな霊魂の描かれ方はおもしろい。風呂場で霊魂と思わずやってしまうあたりがいい。この霊魂とのまぐわいは面白い。しかし、男ってのはこうやって女をおしひろげてしまうものなのかしらん。そう見られているのかしらん。
 「腐敗」はタイトルも中身も、田村隆一の詩を散文にしたような印象。小説としてぎりぎりのラインという気がするが、じゃあ小説ってなんだよって、俺にはわかりません。
 一炊の夢を下敷きにした「蘆生の夢」、そして飛頭蛮をモチーフにした「首の飛ぶ女」。このあたりはなんとなく澁澤龍彦を思わせる。解説に著者の「スタイル」について書かれていたと思うが、そういう意味では似たようなスタイリストかもしれない。あと、石川淳とか。
 最後は「紅葉狩り」。これと「首の飛ぶ女」は別の短編集で読んだっけな。
 ……というわけで、色とりどりであるが、カチッととした視点にブラックさ、ユーモアさふりかけて、やはり素晴らしい。残念ながら、文庫本だったので現代仮名遣いだったけれども、まあそれでもよろしい。
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