『誰も知らない』/監督:是枝裕和

誰も知らない [DVD]
柳楽優弥の事故報道のときにちらっと触れたけれども、『誰も知らない』をついに観た。これは評判通りの立派な映画だった。
▽撮影、演出方法がそうなのだか知らなかったが、会話の自然さというのは本物だ。うるさく騒ぐ弟の子どものうるささなどというものはたいしたものだ。ほんとうにうるさいもの。
▽的外れの感想だと承知の上で言うが、「金がない」ことの怖さをひしひしと感じた。独り暮らし独身男と、母からパージされた子どもたちではまったく違うけれども。やはり水は公園か、などと。『ホームレス中学生』でも観ておけ。
▽YOUのキャラが強烈だ。悪意や後悔のある存在として描かれていない。下手すればイノセントに近い。それゆえに、それが親であることのモンスターさといったらない。よくあの軽自動車はこの親子でCMやったな、というところ。でも、ある意味、ここにある種の母親像や母子像、子ども同士のような仲良し的な、そういう要素が皆無であるとはいえないのかもしらん。
▽子どもたちの描かれ方もイノセントに近い。ただできるかぎりでひたむきだ。他者、男友達たちや少女の介入で壊れるのか(観ていて壊れるのが残念に思える不思議)壊れないのか、というところで壊れない。むしろ少女を取り込む子ども世界。
▽結局、最後まで壊されない。「大変だったなあ、もう大丈夫だ」といって介入してくる現実は描かれないまま終わる。「誰も知らなかった」ではなく「誰も知らない」のだ。
▽印象的な少女は韓英恵。どこか似たような雰囲気の妹は北浦愛。一瞬ハリセンボンの痩せた方かと思ったコンビニ店員はタテタカコという人で、主題歌(モノレールと相まってよい)を歌っている歌手。音楽はゴンチチっぽいと思ったらゴンチチ木村祐一遠藤憲一寺島進という大人たちは逆に揃いすぎた感じ。
▽外国人が観たら、出演者「YOU」について、「え、俺たちも映画の内部に取り込まれているというメタフィクションなの?」みたいな仕掛けと思ったりしなかったかどうかとか、どうでもいいことを想像したりしてみてもした。