“マネーボール”と“マネー”ボール

ヤンキースの“マネー”ボールに注目 (1/2)
サバシアを本命にFA投手獲得に乗り出す

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/mlb/text/200811190003-spnavi_1.html

 タイトルを見て、「ヤンキースもついにビリー・ビーンやセオ・エプスタインのようなGMを招き入れ、完全なセイバーメトリクス戦略を推し進めるのか」と思った。が、実際は金満球団の札束補強話であった。
 もっとも、セイバーメトリクスを駆使することと、その戦術に見合う選手を金でかき集めることは矛盾しない。つーか、レッドソックスはもちろん、ヤンキースもそのようなチームになっているのかもしれない。冒頭に出てくるニック・スウィシャーだって、たしか『マネー・ボール』の中に出てきた新人選手(当時)だったはず。
 それはそうとして、これは、誤用だろうか? 誤用ではないと思う。わざわざ“マネー”としているからだ。いわゆるマネー・ボールとは別の話ですよ、という意思表示だ。だが、ちょっと待ってほしい。こういう使い方をしていると、あまり野球に詳しくない人が、「マネーボールってのあれだろ、金に物を言わせていい選手かき集めることだろ?」などと言いかねない。実際、私はそのような例を知っている。

自前で育てた選手で、「マネーボール」をしている球団に挑んでいく。それがセ・リーグでの広島の存在感であり、役割だと思っている。その信念、伝統を貫いてつかむ栄光だからこそ、本当の価値がある。

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20071015#p1

 はい、広島東洋カープ松田元現オーナーのお言葉です。ん? これも「」がイクスキューズになっているのか? なっていないと思うな、さすがにこれは。もちろん、マネーボールは金野球であって、金による野球世界全体、あるいは、金融工学的アプローチによる野球などいろいろの意味があると思う(このあたりがはっきりしないから、こんなの書くのに迷っている)が、現状、向こうでもこちらでもビッグボールやスモールボールの同列として、扱うべきだろう、と。
 というわけで、なんとなくこういう言葉の使われ方は面白くない。たとえば、前に流行った「老人力」。これも本来の、老いのマイナスをさかしまに見て肯定的に解釈するという面白さが、いつしか「若者に負けない元気おじいちゃん」的な使われ方をするようになって失われてしまったように思う。なんでも「」や“”すりゃいいってもんじゃあない。俺はそう思う。
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