忙しい無題

 あれ、なんか忙しい。やることだらけ。こなせない。このご時世、うらやましい話だと言われるかもしれない。しかし、余裕がない。もう、中小零細企業なんてのは、いや、派遣やパートやアルバイトなどを気軽に雇えないレベルの底辺にとって、もうこれ以上は生きていけないという、最低限のラインまでタコの足をタコが食い終えているような状態であって、海底でタコが二本足で歩いていて、いざ石につまずいて転けたとなると、もうそこらあたりにタコ頭の墨汁ぶちまけて死ぬよりないというところなのだ。タコが海底で転けて岩に頭打っても死なないなんていわないよ絶対。
 それになにより俺はやる気がないときている。死んでいないかしら。なので、いろいろ世の中というのは、うまくマッチしてないところがあると思う。たとえば、あの派遣村にいかざるをえなかった人の能力とやる気、それをおおいに下回る正社員や、あるいは高給取りだって山ほどいることだろう。しかし、しかし、すべてが能力通りというのもそれはそれでつらそうだ。ギスギスしそうだ。
 だから、たとえば、たいへんうらやましくて呪いたくなるが、ただ偶然金持ちに生まれたがゆえに、何不自由なく生きて、楽しみ、死んで行く人たちというのもいるのだけれども、ただ、その偶然、不合理、無意味さをどうにかできないか、という先にはあんまり先がないようにも思える。崖から落ちて死ぬ。そもそも人間はどこかの誰かが合理的な目的のために作ったものではないのだし、いや、もしも俺が作ったんだっていう人がいるのなら出てきてくれ。そしたらお前にひざまずきますので、ちょっと俺の人生を楽にしてください。さあ、早く、早く、なんならひざまずいて、靴を舐めたっていい。もっと色んなところだって舐める。え、うそ、冗談、やめてください、そういんじゃないんです。言い過ぎでした、許して。おねがい、そういうつもりじゃなくて。ああ、こんな……。時間切れ。ブー。
 でもなんだ、えーと、ともかくベーシックインカムというのかなんというのか、ともかく働かなくても誰でも最低限生きさせる世の中の方が、なんだかんだいってそれほどギスギスしねえで、それなり働いたりして、悪くねえような気がするというか、それで今のレベルが保たれるとは思わないが、豊かさのレベルを譲歩することで、なんかなんとかなるんじゃねえか、なってくれたらいいんじゃねえの、そのレベル調整できるって人いましたら、出てきてください。アタシ、ひざまずきますので。つーか、少なくとも、こういうのは視野が狭いのかもしらんが、この日本の富を以てして、望まずして吹きっさらしの外に寝たり、食えなかったりっつーのは、どうにも、その辺は、別に神さまじゃなくても、とんでもねえ、なんとかなるんじゃねえのとか、そう思う。