NHKスペシャル「アメリカ発 世界自動車危機」の感想

 ひさびさにNスペを見た。景気の悪い話をしていたからだ。沸騰都市とかはだめだ。景気のいい話は見たくない。この「アメリカ発」も、7000億円運用する投資家が出てきたが、おおむね黒く塗りつぶされているので歓迎だ。俺はねたみ・そねみ・ひがみに塗りつぶされるような心情ではないが、かといって景気のいい話を進んで見ようというほどポジティブでもない。
 して、自動車危機だ。そこで語られていたのは、GMによる「自動車版サブプライムローン」、そうとしかいいようのないもの。いや、はじめて見聞きしたのかどうか、それすらもわからんが、まあ、やっぱりそういうことか、という気になった。
 そんで、合法的な自動車回収業者が出てきて、「不相応な暮らしをしていたやつを、元に戻すだけさ」的なこと言ってて、まあそういう側面もあるか、と思った。
 リーマンショックやらなんやらで、世界中の市場からすげえ金が消えたんだけど、じゃあ、その消えた金はどこに行ったんだ、鷲になって飛んでいったのか? 誰か儲けてるやつがいるのか? というのが金融・経済門外漢の正直な疑問なんだけれども、その一端は、アメリカの、サブプライムローンで不相応な家に住み、不相応な新車に乗っていた、その贅沢に流れていた、というような。
 もちろん、彼らの一炊の夢なんてものは、贅沢度合いにしろ、責任の度合いにしろたいしたものではないかもしれない。それをどうにか利用しようとしたGMだとかの企業や、金融市場に群がる面々、また、こういった仕組みを容認してきた政治などが大きいはずだ。
 しかし、まあ、その上で、ブツの一端としてそういう末端の人々の不相応さに流れていた、というのも事実だろう。で、考えてみるに、そういう贅沢をひっぺがされて元に戻された人もいる(ゼロどころかマイナス、抱えきれない負債を背負った人もいるか)が、そういう贅沢とは無縁だったけど、仕事的に超ニガテなので、今回の経済ショックで真っ先に首切られる人とかもいるだろう。つーことは、なんか不相応でも何でも、借金できる、ローン組めるうちにやっておいて、一日でも二日でも贅沢した方が得なんじゃねえのとか、そんなことはなかろうか。
 いや、なかろうか、とか言っておいて、じゃあ俺が今、サラ金やカードローンで収入を超えるような何かを買ったりとか、そういうことするかっていうと、まあ絶対にありえないんだけれども。魂の部分の小心と吝嗇ゆえに。でも、たとえば毎月毎月入ってきた金使い切って、楽しく生きられるなら、それもそれでいいんじゃねえの、みてえなところがある。たとえば、俺のような収入で、いくら頑張って老後に備えたところで、たぶんどうにもならねえもん。そういうところの自暴自棄が重なって、大消費時代突入、経済好循環、景気回復大爆笑……てなことにはならねえか。
 いや、しかし、自らを省みるに、自分がサブプライムローンの人たちと何が違うのか、というような思いもある。借金こそしていないが、はたして、この、今の、俺の暮らしが、相応なのか、と。いや、「今の俺」がどの程度の暮らしをする権利があるのか、というような話はあって、たとえば、みんなの生活費の平均から割り出した「最低限の生活」みてえのがあったと思うんだけど、なんというか、そういうものでなく、もっと、地球環境的というか、人的物的資源の限界的? エコロジー的? うーん、人間の営みの総体から見て、その、地球星の一人として、じゃあたとえば、俺程度のが32型のデジタルテレビや5万円くらいのクロスバイク買えるくらい(というか、ものでなんとなく贅沢しているのってこのくらいしか思いつかない)でいいのか、というような。いや、場合によっては、一日三食とか、毎朝のシャワーとか、えーと、競馬とか。
 あれ、俺、人類の進歩と経済の発展、その恩恵とさらなる可能性に対して、あまりにも悲観的すぎるだろうか。一方で、そういう気持ちもむくむくと湧いてくるところがある。ここまでこれて、こんなふうにこれこれこうしているのは、そのおかげじゃねえのって。その伸びていって、ますます人類が豊かになっていく方向、まだ貧しい人間がいる以上、それらが安全や安心を得られるように伸びていくなかで、ますます人類は全体的に行けるんじゃねえの、行けるよ、どこへ、月にだって。いや、月はもう行ってるか。なんかイオとかガニメデとかイスカンダルとかへ。いや、そこまで行かなくても、しっかり銭使っていくのが、この社会に対する功徳やで、みたいな。
 うーん、この二つにひき裂かれながら、なんとなく生きていくしかない。ささやかな銭をどうにかしてふくらませたいと夢見ながら、たとえば、昨日のNスペで大投資家が‘これから自動車は電動化が進むから、プラッチックが重要や。自動車関係の内装とかやっとるプラッチック買いやで!’とか言ってた(ような気がする)ことを参考に、ちょぼちょぼそういうプチ株買うとか、そんなふうにしてやっていこうと思っています。あと、まだ今年の競馬は回収率100%超を維持していて、そこんところも最重要課題として、一発やっていったろ、思います。